フォードF−150 詳細データテスト 驚異の動力性能 トラックらしからず快適 とにかく巨大で高価

公開 : 2023.05.27 20:25  更新 : 2023.06.09 16:33

意匠と技術 ★★★★★★★★☆☆

内燃エンジンを積む14代目の現行F−150は、ほぼ全面的に新設計だ。その生産開始から2年と開けず、昨年4月にF-150ライトニングは登場した。通常のF-150と比較して、それほど大きな違いはないものの、単にV8エンジンを電気モーターに置き換えただけでもない。

通常モデルのトラックは2015年、13代目のときにボディパネルをスティールからアルミへ変更した。F-150ライトニングもアルミボディだが、さらに高張力スティールのラダーフレームシャシーを採用し、このクルマに求められる積載重量を確保した。

直流急速充電は最大150kWだが、充電ポートはアメリカで一般的なCCS1。欧州での正規販売モデルでは、CCS2に変更されるだろう。
直流急速充電は最大150kWだが、充電ポートはアメリカで一般的なCCS1。欧州での正規販売モデルでは、CCS2に変更されるだろう。    LUC LACEY

このフレーム内には、駆動用のモーター2基とリチウムイオンバッテリーが積まれる。防水ケースに収められたバッテリーは、アンダーガードパネルで悪路でのダメージから保護され、リペアや交換のためのアクセスがきわめて容易な設計となっている。

バッテリーの実用容量は、98kWhと131kWhの2タイプが用意される。今回テストする最上位仕様のライトニング・プラチナムは大きいほうを採用し、アメリカEPAの計測値は483kmもの航続距離を謳う。さらに、ラリアットとXLTの各仕様では515kmまで伸びる。

モーターは永久磁石同期式で、前後車軸へダイレクトに設置。それぞれに1速遊星ギア式トランスミッションを備え、前後輪を駆動する。最高出力は571ps、最大トルクは107.2kg-mだが、2023年モデルのエクステンデッドレンジF−150ライトニングでは589psまで引き上げることが公表されている。

アメリカで一般的な、転がり出しの30cmほどを除いた0−97km/h加速タイムは約4.0秒。それでいて、筋骨隆々たるトラックとしての実用性について、EV化に伴う妥協はわずかだという。内燃エンジンのF−150の荷台は、最大積載重量が約1.5tで、牽引重量は最大6tだが、ライトニングでも800kgを超える積載と4500kgまでの牽引が可能だ。

もちろん、この目減りの原因となる最大の要素は、バッテリーの重量だ。F−150ライトニングは5人乗りキャビンと5.5フィートのベッドを組み合わせたスーパークルー仕様のみで、車両重量は3.1t以上。V8モデルよりちょうど1t重い。

とはいえ、そのバッテリーが、実用車としての特別な性能をライトニングに与えているのも事実。高出力のモバイル電源として使えるモデルは、F−150の全ラインナップの中でもライトニングのみだ。

サスペンションはリアがリジッドとなるエンジン車と異なり、EVは前後独立。四輪ともコイルスプリングで、スタビライザーも装備。一般的なパッシブ式のガスショックを採用するが、フロントはモノチューブ、リヤはツインチューブだ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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