フォードF−150 詳細データテスト 驚異の動力性能 トラックらしからず快適 とにかく巨大で高価

公開 : 2023.05.27 20:25  更新 : 2023.06.09 16:33

走り ★★★★★★★★☆☆

この3.1tある、全長5.9mのピックアップトラックは、フルスロットルで発信すると道理に反した領域へと飛び込む。巨大な機械仕掛けのトムソンガゼルよろしく、まずはリアを沈め、それから突如として走り出し、トラクションコントロールがほとんど仕事をしないにも関わらず、4.5秒で97km/hに達するのだ。

その後も勢いは衰えず、ゼロヨン13.3秒をマークする。V8をスーパーチャージャーでチューンナップしたヘネシー・ヴェロシラプターF−150はこれよりわずかに速いが、シングルモーターのポルシェタイカンは凌いでいる。信じ難いことだが、BMWの傑作、E46型M3すら上回るタイムだ。

巨大なクルマだが、加速性能は驚異的。挙動のチューニングは、持て余すようなことにならないよう仕立てられている。無論、そのサイズや重量を無視した運転をしない限りは、だが。
巨大なクルマだが、加速性能は驚異的。挙動のチューニングは、持て余すようなことにならないよう仕立てられている。無論、そのサイズや重量を無視した運転をしない限りは、だが。    LUC LACEY

167km/hでスピードリミッターが効くまで、力強い加速は続く。けれども、賢明な動きに見える以上のとんでもなく高いスピードに到達することははばかられた。というのも、ハードに加速していても、F−150ライトニングはそれ以外のなにものでもなかったからだ。

その動きは非常に大きく重いクルマのそれにほかならず、しかも実用本意の高級感を指向してチューニングされているからだ。まさしく、そうあるべき姿に仕上がっているのである。

トラクションはたっぷりとあり、ペダルレスポンスはプログレッシブ。ストッピングパワーは、少なくともドライコンディションであれば、このサイズ感から生じる心配を和らげるに十分なほど真っ当だ。

しかし、モーターと操縦系は勢いをうまくコントロールでき、また思慮深くボディ挙動が手に余るようなことにならないようチューンされている。もっとも、車体のサイズや車両重量を軽視すれば、その限りではないのだが。

ただし、道に十分な広さがあり、日常的なスピードで流しているぶんには楽しいし、運転するのは非常にシンプルだ。走行モードはノーマルとスポーツに、オフロードと牽引が設定されており、ワンペダル電力回生も選択できる。とはいえ、エネルギー回生のコントロールはみごとというわけではない。

ワンペダルモードのように、合成走行音もオン/オフが可能だが、オンにしていても音は控えめ。この重量と速さのクルマが、周囲のクルマに、あまり類がないほどにミラーを埋め尽くすまでにじり寄っても、威圧感を与えることはない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    英国編集部ライター
  • 撮影

    リュク・レーシー

    Luc Lacey

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    関耕一郎

    Koichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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