ビッグモーター保険不正 2006年に社長みずから会議で指示 「客にはわからんじゃろ」

公開 : 2023.08.01 11:45  更新 : 2023.08.01 14:56

「過去の兼重社長の指示です」

「2006年だったと思います。西日本にあるビッグモーターA店(メールには実名記載)で販売店の店長会議があり、全国から店長や工場長などが出席しておりました」(情報提供者)

「その時に、B店の店長(工場長だったかもしれません)から保険修理の話が上がりました」

「それは事故でぶつけたボディパーツを保険修理した際、新品ではなくリユース品(中古品)を使用した事例の紹介でした。中古品を使ったことで利益が上がったという報告だったのですが、その報告を受けた兼重社長(当時)は嬉しそうに、次のように言っていました」

「請求は(新品として)保険でやればいい。お客様にはリユースだろうが新品だろうがきれいに色を塗って仕上げればわからんじゃろ。どんどん、リユース部品、リビルト商品を使いなさい」(当時の兼重社長の発言)

情報提供者は続ける。

「当事、わたしは営業部門にいたのと、入社してからまだ日が浅かったため板金修理のことはよくわからなかったんですが、お客様や保険会社には新品として修理して、実際には中古品を使う……そんなことが許されるんだろうか? と思いながら、兼重社長の指示を聞いておりました」

「今思えば立派な保険金詐欺の指示ですよね。おそらく、この会議での指示以降、保険金不正請求が始まったのではないかと思っています。このようなことも、今回調査が入ればわかりそうですね」

衝撃の内容であった。

2006年と言えば、前副社長の兼重宏一氏(1988年生まれ)はまだ高校生~早稲田大学に入るかどうかのころであるから、当然、不正に関わるはずはない。

テレビを中心としたマスコミ報道では、宏一氏が「戦犯」としてやり玉にあげられているが、実際は2006年に「実際は中古品を使って綺麗に仕上げて新品パーツと同じ金額を保険会社に請求する、客にももちろん言わない」というあくどい作業はすでに始まっていたことになる

この件について大手損保会社の幹部2名に尋ねたところ匿名での回答ならということでコメントをくれた。

「兼重社長がそんなことを!」

「兼重社長がそんな事を言われたとは、われわれには到底信じられません。リサイクル部品の使用は損保でも推奨していました。エコかつ低廉な修理費で損害率も抑えられるからという理由です」(大手損保ビッグモーター担当者)

「当然、リサイクル部品を使用して修理をおこなう場合にはお客様の同意が必須となります。黙って交換することなど絶対にしないはずです。ましてや、新品と偽って中身はリサイクル品だったなんてことは絶対にあってはならないことです」と続ける。

また別の担当者はこのように話す。

「兼重社長は自動車保険のことを『お客さんに感動を与える存在』としてとても大切に考えてくれていました」

「事故をおこして多大な損害を受けたとしても、保険があったから良かった。何百万円の修理代も保険のおかげで支払わずに済んだ…。そんな感動を与えられるのが自動車保険だと」

「わたしたち損保の人間にとってこんなことを言ってくれる存在は中古車販売会社の経営者としてはまずいません。みんなで感動しましたよ」

「不正行為について兼重宏行社長は特に厳しかったんですが……」

筆者は別途取材を進め、当時の事情を知るビッグモーター元板金部門社員にもその話を聞いてみた。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    加藤久美子

    Kumiko Kato

    「クルマで悲しい目にあった人の声を伝えたい」という思いから、盗難/詐欺/横領/交通事故など物騒なテーマの執筆が近年は急増中。自動車メディア以外ではFRIDAY他週刊誌にも多数寄稿。現在の愛車は27万km走行、1998年登録のアルファ・ロメオ916スパイダー。クルマ英才教育を施してきた息子がおなかにいる時からの愛車で思い出が多すぎて手放せないのが悩み。

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