絶滅危惧… 高性能FRセダン「スカイライン・ニスモ」登場! 200万円差の価値は?

公開 : 2023.08.08 10:33

足回りの注目点 太くなった後輪

前後のウインドウと車体との接着剤塗布を全周とし、車体剛性を向上。

ホイールは、デザインの自由度が高い鋳造でありながら鍛造並みの剛性を備えた「ダービル鋳造システム」を用いたエンケイ製を採用。また、タイヤサイズに対してワイドリムとなっている。

スカイライン・ニスモ(NISMOステルスグレー)
スカイラインニスモ(NISMOステルスグレー)    池之平昌信

タイヤは専用開発のダンロップSPスポーツマックスGT600を履く。

サイズは前輪が400Rと同じ245/40R19だが、後輪は20mmワイドな265/35R19。もちろんサスチューンも専用開発である。

興味深いのはタイヤサイズである。

資料によるとトルク増に対応したサイズ設定となっているが、後輪駆動車の操安性ではトラクションが重要であり、タイヤサイズ設定からしてもトラクションを活かした“ラインコントロール性と安定性を重視”しているのが見て取れる。

試乗した印象もそのとおりだった。

常に感じるのは「FRの楽しさ」

唐突な反応なく操舵初期から「往なし」と「素直さ」をバランスさせてラインに乗り、後輪のトラクションでじわりと押し出す。

減速しつつラインを絞っても、加速ではらませても、回頭やスリップアングルの乱れは最小限に抑えられている。

スカイライン・ニスモ(ダークメタルグレー)
スカイライン・ニスモ(ダークメタルグレー)    池之平昌信

限界維持までは試していないが、かなり攻め込んでも基本特性や操り心地は変わらない。

後輪に掛かるトラクションも心地よく常にFRスポーツを操っている感覚が楽しめる。過渡特性にこだわって煮詰めたのがよく分かるハンドリングだ。

限界性能を求めるハードコアスポーツの醍醐味は、効率的な速さと限界域でのコントロール性。

もっとも、日常走行での快適性や中庸域での扱いやすさを蔑ろにした一昔前のハードコアスポーツと異なり、最近では2ペダルはもちろん普段使いを躊躇うようなモデルは減少。「GT」と「R」の境目も曖昧になりつつある。

個人的にはそういった背景やスペックを考えるなら、スカイライン・ニスモはどちらに分類してもいい気もする。

400R+約200万円 価格について

ちなみにスカイライン・ニスモ、および400R向けにサーキット走行を前提とした「機械式LSD」や、オーリンズ製をベースに開発された「全長調整式サス」などのNISMOパーツも用意される。

限界性能を求める、つまりは「スカイラインGT“-R”」化を望むならそれらの装着も悪くない。

スカイライン・ニスモ(NISMOステルスグレー)
スカイライン・ニスモ(NISMOステルスグレー)    池之平昌信

「The Skyline GT」を商品コンセプトに掲げた「GT」へのこだわりを試乗印象から解釈するなら、信頼感・対話感をベースにしたファントゥドライブを全域に展開させたことなのかもしれない。

限られた状況での短時間試乗ですべてが見切れる訳もないが、走り出した瞬間から良質なファントゥドライブが始まるような感じなのだ。

400Rに対して約200万円高。

スペック対比では正直割高な印象もあるが、数値に表れない部分の熟成や洗練は乗れば伝わってくる。

何よりも絶滅危惧種となりそうな純内燃機車のFRスポーツセダン。「次はないかもしれない」と思えばなおさら。買っておきたいとなるのも人情だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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