【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#24 クルマってこんなにハゲるのか!

公開 : 2025.12.05 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第24回は『クルマってこんなにハゲるのか!』を語ります。

エンジンフードの塗装がハゲて来た!

大貴族号(筆者の所有する先代マセラティクアトロポルテ)は、エンジンフードの塗装がハゲて来た。具体的には、表面のクリア塗装が一部剥離しつつある。一番陽が当たる部分が真っ先に劣化した、と推測される。

ハゲたのはエンジンフードなので、一枚まるごと塗り直すのは比較的容易だ。しかし、塗装の劣化はエンジンフードだけではないだろう。いずれ他の部分もハゲてくるはず。そうなったら、全塗装するしかない。

エンジンフードの塗装がハゲて来た、大貴族号こと筆者の所有する先代マセラティ・クアトロポルテ。
エンジンフードの塗装がハゲて来た、大貴族号こと筆者の所有する先代マセラティ・クアトロポルテ。    清水草一

車両本体200万円(+納車前整備代80万円くらい)のクルマを全塗装するのは、投資としては極めて分が悪い。超不人気モデルにつき、下取りに出してもほとんどゼロ円らしい。部品取り車両としてなら、多少値が付くかもしれないが、それでも10万円くらいだろうか? 今度タコちゃん(マイクロ・デポ代表岡本和久氏)に聞いてみよう。

最大で10万円の価値しかない(推定です)クルマを、100万円くらいかけて全塗装するのは、経済行為としては『カネをドブに捨てるようなもの』である。大金持ちならそれもいいが、私は大金持ちじゃない。そもそも大金持ちは、200万円の激安中古マセラティを買ったりしない。

パールホワイトは無敵だ!

どうすべきか?

幸いにもボディカラーはパールホワイトだ。ハゲは目立たない。目立たないどころが、目を凝らさないと発見できない。他の部分がハゲてきても、同じようなものだろう。これが濃色なら、数メートル先から判別できるかもしれないが、パールホワイトは無敵だ。ハゲに関しては。

参考までにイギリスで撮影されたベントレー・アルナージ。
参考までにイギリスで撮影されたベントレーアルナージ。    AUTOCAR

このまま放置しようか?

私はピカピカの新車を買ったんじゃない。ロマンを求めてステキなポンコツを買ったのだ。ステキなポンコツのクリア塗装が一部ハゲていて何が悪い。むしろ歓迎だ。そこらじゅうハゲだらけでもいいくらいだ!

でも、カーマニアとして、どこかに罪悪感が残る。

そんなある日、私は近所を散歩していた。そして通ったことのない路地に足を踏み入れた。

月極駐車場に、紺の高級セダンが止まっていた。ふと見ると、表面のクリア塗装がハゲている。

「(おっ、ハゲじゃん)」

私は強いシンパシーを感じて接近した。どうやらベントレーらしい。

「ひいいっ!」

近くに寄って悲鳴が出た。凄まじくハゲていたのだ。いやもう凄いなんてもんじゃない。これまで目撃したクルマの中で、最大のハゲかもしれない。

クルマってこんなにハゲるのかぁ。しかもベントレー・アルナージが!

ハゲているのは表面のクリア塗装だけっぽいが、その下の本塗装も完全に色褪せている。クリアがハゲると、いずれはこうなるのである。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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