なぜ「IS F」を名乗らない? 5L V8搭載、レクサスIS500 Fスポーツ・パフォーマンスは何者なのか

公開 : 2023.01.04 18:15

この時代にV8を積んで新登場した「レクサスIS500」。なぜIS Fではなく、「Fスポーツ・パフォーマンス」というモデル名なのか。試乗して考えましょう。

FスポーツがISのトップモデルに

GSが整理されレクサスの現ラインナップのセダンはIS、ES、LSの3系統となり、ISはセダンとFRレクサス車のエントリーに位置するモデルである。

代を重ねる毎に車体サイズを拡大しているが、スポーツセダンを基本に置いたコンセプトは変わっていない。

レクサスIS500 Fスポーツ・パフォーマンス・ファーストエディション(チタニウムカーバイトグレー)。エンジンフード、フロントフェンダーパネルの意匠をIS 350 Fスポーツから変更。V8の存在を物語る力強い造形になった。
レクサスIS500 Fスポーツ・パフォーマンス・ファーストエディション(チタニウムカーバイトグレー)。エンジンフード、フロントフェンダーパネルの意匠をIS 350 Fスポーツから変更。V8の存在を物語る力強い造形になった。    宮澤佳久

そんなISを象徴したモデルが「IS500 Fスポーツ・パフォーマンス」であり、現行車の中でもレクサスのスポーツ性を代表する存在としてラインナップに追加された。

搭載パワーユニットは「先代IS F」に採用され、性能面でその後継モデルとなるRC Fにも搭載されている2UR-GSE。

5LのV8はレクサス車でも最大排気量にして最多気筒エンジンであり、最近では少数派となったNA仕様の高性能エンジンである。ミッションには8速ATを採用する。

シャシー周りではバネ/ダンパー(AVS)を専用セッティングとし、リアパフォーマンスダンパーを追加。デフにはトルセンLSDを採用し、ブレーキローターも大径化するなどポテンシャルアップが施されている。

また、エンジンの大型化に伴いボンネット形状を変更。フロントフェンダーパネルやエグゾーストマフラーなども変えられ、外観も500 Fスポーツ専用となる。スペックも見た目も特別仕立てのISなのだ。

481psの自然吸気V8 どんな感じ?

大排気量も多気筒も、エコの観点からすれば時代に逆行した印象は拭えない。

と理性が語りかけてもクルマ好きには抗い難い昂揚感、快感を覚えさせるエンジンである。

IS500 Fスポーツ・パフォーマンス・ファーストエディション(チタニウムカーバイトグレー)。4本出しのエグゾーストは専用品。
IS500 Fスポーツ・パフォーマンス・ファーストエディション(チタニウムカーバイトグレー)。4本出しのエグゾーストは専用品。    宮澤佳久

大排気量特有のトルクに乗せた太い力感、7000rpm超まで一気に上り詰めるハイチューンの加速。高精度で重質な回転感覚。加速の途切れなく、それでいて小気味よい変速感のミッション。どれもがパワートレインを操る心地よさに優れている。

高性能BEVのように踏み込み直後に蹴り出すような瞬発力はないが、巡航から深く踏み込めばダウンシフトとともに素早く加速が立ち上がる。

しかも、粗雑な加速度の変化は抑えられている。ごく短い変化の中に“滑らかな繋ぎ”が織り込まれているような感覚。

それがNA仕様内燃機特有のタイムラグであるか、制御によって生み出されたものかが分からないにしても、阿吽の呼吸とも以心伝心とも表せない操り心地を生み出している。「間」のよさと言い換えてもいいだろう。

「IS F」を名乗らないワケ

回転数上昇と排気音の高まり。

全開6000rpm超でも威圧的な騒音はなく、抑えの利いた昂揚感で運転の因果を示すようなエンジンフィールもまた操り心地のよさ。

IS500 Fスポーツ・パフォーマンス・ファーストエディションの前席(内装色:ブラック/ブラウンパーフォレーション+ブラウンステッチ)。
IS500 Fスポーツ・パフォーマンス・ファーストエディションの前席(内装色:ブラック/ブラウンパーフォレーション+ブラウンステッチ)。    宮澤佳久

ドライバーを脅す、あるいは乗りこなしを要求するような所作もなく、大人味のパワーフィールに良質なスポーツ性を感じてしまう。

「500 Fスポーツ」であって「F」ではない。

前述のとおり、パワートレインは「RC F」と同等であっても二代目IS Fとならないのは、“フットワークの視線の違い”と考えていいだろう。

IS Fやその後継となるRC Fは、高速サーキットでの限界走行まで見据えてサス/タイヤはもちろん、車体まで手を加えている。結果、揺るぎないグリップ性能により際立つ安定性・コントロール性を得ている。

それは性能的には素晴らしいが、一般走行プラスαレベルでは安定志向が強すぎて、切れ味とか軽快感が低下してしまう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    川島茂夫

    Shigeo Kawashima

    1956年生まれ。子どものころから航空機を筆頭とした乗り物や機械好き。プラモデルからエンジン模型飛行機へと進み、その延長でスロットレーシングを軸にした交友関係から自動車専門誌業界へ。寄稿していた編集部の勧めもあって大学卒業と同時に自動車評論家として自立。「機械の中に刻み込まれたメッセージの解読こそ自動車評論の醍醐味だ!」と思っている。
  • 撮影

    宮澤佳久

    Yoshihisa Miyazawa

    1963年生まれ。日大芸術学部写真学科を卒業後、スタジオ、個人写真家の助手を経て、1989年に独立。人物撮影を中心に、雑誌/広告/カタログ/ウェブ媒体などで撮影。大のクルマ好きでありながら、仕事柄、荷物が多く積める実用車ばかり乗り継いできた。遅咲きデビューの自動車専門誌。多様な被写体を撮ってきた経験を活かしつつ、老体に鞭を打ち日々奮闘中。
  • 編集

    徳永徹

    Tetsu Tokunaga

    1975年生まれ。2013年にCLASSIC & SPORTS CAR日本版創刊号の製作に関わったあと、AUTOCAR JAPAN編集部に加わる。クルマ遊びは、新車購入よりも、格安中古車を手に入れ、パテ盛り、コンパウンド磨きで仕上げるのがモットー。ただし不器用。

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