模型の世界も3Dデータ活用!スーパーセブン超絶キットの話【長尾循の古今東西モデルカーよもやま話:第13回】

公開 : 2025.11.26 12:05

元モデル・カーズおよびカー・マガジン編集長である長尾循による、古今東西モデルカーに関する月イチのコラムです。第13回は模型の世界でもメーカー、個人共に活用されている3Dデータの話です。

3Dデータを作り3Dプリンターで出力

以前から「自動車産業は100年に一度の変革期の真っ只中だ」なんてことが盛んに言われておりますが、まぁ、クルマの世界に限らずあらゆる分野で今までの常識が次々に上書きされ、技術も日進月歩。そんな状況は模型、ホビーの世界でも然りであります。

今回は、そんなイマドキな模型の話題をご紹介いたしましょう。

レイクフロントモデルの1/32スーパーセブン。左がJPE、右がBDR。
レイクフロントモデルの1/32スーパーセブン。左がJPE、右がBDR。    レイクフロントモデル

さて、昨今の模型メーカーが自社製品の設計に3Dデータを活用しているのは他の業界と同様ですが、さらに近年では個人が模型の3Dデータを制作したり、ウェブ上で市販されている3Dデータを購入し自宅の3Dプリンターで出力して楽しむ、といったことも珍しくありません。

昔から『趣味が高じて小規模なガレージメーカーになる』という流れは模型の世界でもありましたが、かつては手作業で原型を作り、それをホワイトメタルやレジン樹脂でひとつひとつ複製するという方法が主流でした。しかし現在ではその手法が、3Dデータを作りそれを3Dプリンターで出力する方法に進化しているわけです。

滋賀県の小さな工房からリリース

というわけで、今回ご紹介するのは滋賀県の『レイクフロントモデル』という小さな工房からリリースされた、3Dプリンターで作られた組み立てキット。1/32スケールのスーパーセブンJPEとスーパーセブンBDRです。

レイクフロントモデルの3Dプリンターキットは精密造形が可能な光造形方式で製作されており、箱の中身のパーツ群は一般的なプラモデルと違って各パーツが地面からニョキニョキ生えているような形となっています。

こうして見ると、パーツの細かさがわかります。集中力と根気が必要です。
こうして見ると、パーツの細かさがわかります。集中力と根気が必要です。    長尾循

プラモデルで言うところのランナーの代わりに、無数の細いステーがパーツを支えていますので、必要なパーツを切り離す際にはよく切れる細刃のニッパー、そして集中力と根気が必要。

キットのモチーフとなったJPEとBDRは、いずれもドディオンアクスルにロングコクピットという1990年頃のモデルですが、ご覧の通りエンジンからサスペンションにいたるまで、1/32スケールのカーモデルとしては異常なまでの高解像度。

ちなみにBDRの方はサイクルフェンダーとクラムシェルフェンダー、ホイールも8本スポークとケントアロイの2種類が用意され、どちらか好きな方を選んで作れる2in1キットとなっています。

組み立てやすさにも留意したパーツ構成

確かに3Dモデルならではの超絶再現度ではありますが、一部のマニア系ガレージキットに見られるような『作れるもんなら作ってみやがれ』的なキビシイ印象はなく、比較的組み立てやすさにも留意したパーツ構成。模型工作好きであれば無理なく組み立てられる……かな?

そういえばこのキットに組み立て説明書は付いておらず、付属のQRコードから組み立て説明書の画像を見てね、というのもイマドキですね。ちなみにこれらのキットはJPEとBDR、いずれも限定生産20台(!)という超少量生産だそうです。こんなところからも、最新の3Dキットと、昔のベストセラープラモデルとの間の、その製品のあり方、コンセプトの大きな違いを感じます。

付属のQRコードから組み立て説明書の画像を見るというのもイマドキです。
付属のQRコードから組み立て説明書の画像を見るというのもイマドキです。    長尾循

例えば昔はひとつのキットを100万人のファンが手にして、それがある世代の共通体験となったものですが、現在では超小ロットのモデルが何万種類もリリースされて、それをごく少数のファンがお気に入りのアイテムをそれぞれ密やかに楽しむ、そんな時代なんですね。これもまた多様性の時代?

そして個人的には、この調子で今後もこのシリーズから1950年代〜1960年代の欧州車がガンガン登場すれば素敵だなぁ、と期待と妄想は大きく膨らむのでありました。

製品情報
製品名:レイクフロントモデル 1/32
#41 1/32 スーパーセブンBDR 2in1キット 価格8800円 11月26日発売 限定20台
#42 1/32スーパーセブンJPEキット 価格8800円 11月26日発売 限定20台
取材協力:モデルガレージロム

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    長尾循

    Jun Nagao

    1962年生まれ。企画室ネコ時代を知る最後の世代としてモデル・カーズとカー・マガジンの編集に携わったのち定年退職。子供の頃からの夢「クルマと模型で遊んで暮らす人生」を目指し(既に実践中か?)今なおフリーランスとして仕事に追われる日々。1985年に買ったスーパーセブンにいまだに乗り続けている進歩のない人。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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