50年間に多様な広がり BMW 3シリーズ E21型とG20型(1) 02シリーズから熟成の進化

公開 : 2025.12.05 17:45

半世紀に多様な広がりを見せた3シリーズ クラス上へ迫る雰囲気を醸成したE21型 しなやかさの中にある操る面白さ 才色兼備なオールラウンダーと呼べるG20型 UK編集部が初代と現世代を比較

半世紀に多様な広がりを見せた3シリーズ

50年前に発売され、今まで提供が途絶えなかったモデルは数えるほどしかない。昔の名前を借りて、まったく違うクルマへ生まれ変わった例も多い。

初代のDNAをしっかり受け継ぐのは、フォードマスタングフォルクスワーゲン・ゴルフトヨタランドクルーザーホンダシビックポルシェ911メルセデス・ベンツ Sクラスなど。いずれも、名車ばかりなことがわかる。

ライト・ブルーのBMW 320 オートマティック(E21型)と、グレーのBMW 320i Mスポーツ(G20型)
ライト・ブルーのBMW 320 オートマティック(E21型)と、グレーのBMW 320i Mスポーツ(G20型)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

だがBMWには、そんな「早寿」を迎えたモデルが2つもある。1972年に生まれた5シリーズと、1975年に生まれた3シリーズだ。7シリーズも、もうすぐここへ加わる。

5シリーズも大きな影響を及ぼしたが、より我々へ身近で強い記憶を残し続けてきたのは、3シリーズの方だろう。これまで2000万台を売り、ディーゼルエンジンのステーションワゴンからV8エンジンを積んだM3まで、多様な広がりも見せてきた。

G20型320iの直系の祖先、E21型320

今回ご登場願った初代、E21型3シリーズは落ち着いたブルーが好印象。その隣へ停まるのは、最新のG20型3シリーズ。思いがけず、興味深い比較となった。

530psを誇るサルーン、M3との乗り比べも面白そうだったが、320i Mスポーツの方が、より2025年の代表へ近いはず。大人4名が快適に移動でき、14.0km/L以上の燃費を得られ、英国価格は約4万ポンド(約816万円)。183psで、公道を不満なく走れる。

BMW 320 オートマティック(E21型/1975年式/英国仕様)
BMW 320 オートマティック(E21型/1975年式/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

E21型は、販売中のものを偶然ネットで見つけた、1975年式320。テールランプの間に、お飾りの樹脂製パネルがない初期型で、まさにG20型直系の祖先だ。

2026年には、新しい「ノイエクラッセ」世代のi3が登場予定。しばらくエンジンで走る3シリーズも残るが、10年後も生き延びているとは考え難い。2035年のBMWショールームには、並んでいないはず。そう考えると、少し寂しい。

クラス上へ迫る雰囲気の醸成へ成功

初代3シリーズは、オリジナルのノイエ・クラッセ、02シリーズの流れを汲んだ、ポール・ブラック氏によるスタイリングをまとう堅実なサルーンだった。開発予算は、3500万ドイツマルク。現在の価値では約39億円に相当し、規模としては小さい。

E21型のメカニズムの多くは、02シリーズからのキャリーオーバー。それでも小さなBMWとして熟成され、品質が高められ、クラス上へ迫る雰囲気の醸成へ成功していた。ラック&ピニオン式ステアリングラックとアンチロールバーが、強みになった。

BMW 320 オートマティック(E21型/1975年式/英国仕様)
BMW 320 オートマティック(E21型/1975年式/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

程なくして、3シリーズはパワーステアリングと燃料インジェクションを獲得。滑らかに回る直列6気筒エンジンも載るようになった。リミテッドスリップ・デフがオプションで設定され、323iはスポーティな走りを実現。スプリングレートも、高められていった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

BMW 3シリーズ E21型とG20型の前後関係

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