過去最強で最重量 ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボ E-ハイブリッドへ試乗 シュツットガルトの新たな偉業

公開 : 2023.10.31 19:05

揺るぎない勢いでボディを超高速域へ誘う

今回、カイエン・ターボ E-ハイブリッドへ試乗したのは、スペインの少々荒れた一般道。デフォルトでは、エンジンを始動しないE-パワー・モードが選ばれる。

新しい駆動用バッテリーとモーターの組み合わせにより、加速はエネルギッシュ。発進・停止を繰り返す、市街地での走りへ見事に対応してくれる。

ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボ E-ハイブリッド(欧州仕様)
ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボ E-ハイブリッド(欧州仕様)

ハイブリッド・モードへ切り替えると、ツインターボエンジンが目覚め、走りは一層活発に。動力性能が目立って高まるだけでなく、クルージング時の安楽さも増す。

ブレーキペダルの感触は、従来から改善。3段階に切り替わる回生ブレーキがメインの、緩やかな減速時には多少の不明瞭さは残っている。だが、GTパッケージに含まれるセラミックコンポジット・ディスクを挟む場面では、タッチが明らかに良くなった。

740psのすべてを思い切り味わうなら、スポーツかスポーツプラス・モードを選ぶといい。駆動用モーターがエンジンのターボラグの谷を埋め、低回転域から爽快でリニアな加速を引き出せる。

ブーストが増すと、圧倒されるようなペースへ上昇。揺るぎない勢いで、大きなボディを超高速域へ誘う。0-100km/h加速は3.9秒で、最高速度は305km/hに自主規制されている。これは、748psのBMW XM レッドレーベルに0.2秒と14km/h勝る。

GTパッケージの1つ、チタン製エグゾーストは刺激的なサウンドでドライビング体験をドラマチックに盛り上げる。フルスロットル時の迫力ある響きだけでなく、アクセルオフ時の破裂音も気持ちいい。

能力の幅に感服 シュツットガルトの新たな偉業

前述の通り車重は2tを軽く超えるが、操縦性には感心するほどの落ち着きが伴う。ステアリングは適度に軽く、反応は極めて鋭い。オプションの後輪操舵システムを追加すると、駆動用バッテリーが載るリア側を積極的に旋回させることで、敏捷性が更に増す。

電動油圧式のアンチロールバーは、コーナリング時の姿勢を引き締める。四輪駆動とトルクベクタリング・システムが、迅速な脱出加速を叶えている。

ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボ E-ハイブリッド(欧州仕様)
ポルシェ・カイエン・クーペ・ターボ E-ハイブリッド(欧州仕様)

グリップ力にも驚かされた。タイヤはピレリ Pゼロ・コルサで、サイズは試乗車の場合、フロントが285/40 ZR21、リアが315/35 ZR21という組み合わせだった。

穏やかなカイエンよりサイドウォールは薄く、路面の凹凸をいなすという点では劣る。だが、エアスプリングと可変ダンパーが相乗し、大きな衝撃を吸収。比較的快適な乗り心地を実現していた。

カイエン・ターボ E-ハイブリッドの能力の幅には、感服してしまう。市街地なら、電気の力でだけで快適に移動でき、走行可能な距離も充分。それでいて、動的能力では並み居るライバルに引けを取らない。タイヤを交換すれば、悪路にも対応できる。

ドイツ・シュツットガルトの技術者による、新たな偉業といっていい。ただし、価格は英国で15万4000ポンド(約2787万円)。ドライバーズSUVの能力を体験できるのは、ひと握りの人に限られるだろう。

◯:力強さと速さ、柔軟性を叶えたハイブリッド・パワートレイン 最新技術と高級感を両立したインテリア 見事な操縦性を生む洗練されたサスペンション

△:若干曖昧なブレーキペダルの感触 ライバルより短いEVモードでの航続距離 お手頃ではない価格

記事に関わった人々

  • 執筆

    グレッグ・ケーブル

    Greg Kable

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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