中国の「警鐘」で目覚めた日産 EVの低価格化へ取り組み強化 新モデルの投入急ぐ

公開 : 2023.10.31 18:05

・安価な中国製EVの台頭は、日産のような既存メーカーにとって「警鐘」となった。
・日産は低価格のEV開発計画を再考し、コスト抑制と新モデルの投入を急いでいる。
・内田CEOは社内の体制も見直し、迅速な意思決定を実現。

安価な中国製EVが「警鐘」を鳴らした

EV(電気自動車)市場は予想以上に「速く」動いており、特に中国から登場した低価格EVが従来の自動車メーカーに「警鐘」を鳴らしている。このため、日産は開発計画を見直し、EVの低価格化を再検討することになったという。

25日に開幕したジャパンモビリティショー2023(一般公開日:10月28日~11月5日)で、日産の内田誠CEOは取材に対し、EV価格は2030年計画を策定した2021年時点の予測よりも急速に下がっており、市場の動きは速かったと述べた。

日産自動車の内田誠CEOは、EV価格は予測よりも「大幅」に早く下がっていると述べた。
日産自動車の内田誠CEOは、EV価格は予測よりも「大幅」に早く下がっていると述べた。

「このプロセスは段階的に進むものだと思っていましたが、実際にはさらに加速しています。中国がこのプロセスを国内外で加速させているのです」

「わたし達は価格について議論しているところです。世界中でEVを購入しやすい価格にできないか検討しています。これは今後の重要な課題の1つです」

内田CEOは、日産のEV価格の引き下げ時期は未定だが、社内で議論を進めているテーマであり、「(価格引き下げの)計画はある」と述べた。また、単に小型で安価なEVを作るのではなく、手頃でお買い得なものにすることが重要だとした。

欧州や米国が中国製の自動車に関税を導入していることについてはコメントを避けた。

「公正な市場であれば、競争は問題ありません。今、中国からの強い波を受け、(日産は)EVのパイオニアとしてこれにどう対処するか、つまりEVの作り方をどう変えて、市場で競争力をつけるかを検討しなければなりません」

内田CEOによると、中国は日産のような企業にとって「警鐘(wake-up call)」を鳴らす存在となっており、新しい技術や製品をより早く市場投入するために、EVの開発方法を見直すよう促されたという。

日産は2026年頃にハイブリッドの「eパワー」車のコストをICE(内燃エンジン車)と同等にすることを目標に、駆動ユニットの開発と生産の簡素化を目指している。内田CEOは、こうした新しいアプローチはEVにも利点があるとしている。

内田CEOはまた、より迅速な意思決定を可能にするために日産の経営体制を見直し、各地域トップの権限を強化した。日産社内における「マインドセットの変革」を主導し、「自動車を市場に投入するにあたり、以前話していたようなことは話さない」ようにしたという。

また、ルノー・日産・三菱アライアンスの新たな展開が順調に進んでおり、これに関する詳細は追って発表するという。

さらに広く、「世界各地でEVに対する規制がある」として、すべての自動車メーカーがこれまで以上のパートナーシップを必要とするだろうと述べた。「(規制に)単独で取り組むことは、大きな挑戦となるでしょう。変化を望むのであれば、他者とのパートナーシップを視野に入れる必要があります」

記事に関わった人々

  • 執筆

    マーク・ティショー

    Mark Tisshaw

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

関連テーマ

おすすめ記事