ポルシェ・カイエン 詳細データテスト 無駄なアシストのないV8 クラス最高水準のドライバビリティ

公開 : 2024.03.09 20:25

素のV8という、ある意味待望の仕様が復活した改良版カイエン。いまどきMHEVですらない貴重な仕様は、昔ながらのV8らしさと、他の追随を許さぬハンドリングを楽しめる、エンスージアスト好みのテイストとなっています。

はじめに

ビッグマイナーチェンジとフルチェンジの線引きはどこにあるのか。今回のカイエン、言ってしまえばE3こと3代目のアップデート版なのだが、新世代モデルと言えるだけの変更が施されている。

エンジンはV6とV8のままだが、それぞれのユニットは大幅に改修。サスペンションも見直しが図られ、インテリアは体感の影響を受けてデザインを刷新した。エクステリアの変化はわずかだが、中身はもはや、2018年に登場した既存のカイエンとは別物となっている。

テスト車:ポルシェ・カイエンS
テスト車:ポルシェ・カイエンS

なにゆえフルモデルチェンジにも近い内容ながら、大幅アップデートという形をポルシェはとったのか。すべてはタイミングの問題だ。

カイエンはいまだポルシェのベストセラーだが、昔ながらの機械式4WDシステムを用いる内燃エンジン搭載のSUVは、将来がどうなるかは不透明だ。弟分のマカンは完全電動化が決まっており、カイエンも電動モデルが2027年に登場予定となっている。

これと同時に、コードネームK1こと、カイエンの上位に位置する7座オフローダーEVを投入する計画もある。いま、オールドスクールなカイエンをフルチェンジするのではなく、大幅なテコ入れを図るほうが妥当だと判断されたわけだ。

それでも、今後4年間、ポルシェはおそらく相当数の内燃機関を積んだカイエンを世界中で販売する。とはいえ、全面改良のコストを正当化できるほどではないと判断されたのだろう。そうした経緯で生まれた、E3世代の最終進化形となるだろう改良型カイエン、その進化に迫ってみよう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    関耕一郎

    Kouichiro Seki

    1975年生まれ。20世紀末から自動車誌編集に携わり「AUTOCAR JAPAN」にも参加。その後はスポーツ/サブカルチャー/グルメ/美容など節操なく執筆や編集を経験するも結局は自動車ライターに落ち着く。目下の悩みは、折り込みチラシやファミレスのメニューにも無意識で誤植を探してしまう職業病。至福の空間は、いいクルマの運転席と台所と釣り場。

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