クレア・ウイリアムズ・インタビュー ー F1の技術をロードカーに展開

公開 : 2014.11.01 22:40  更新 : 2017.06.01 02:11

”レースチームはオーケストラであると、いつも私は思っています。物事を成し遂げるのにふさわしい力と、リーダーシップがあり、皆が懸命に努力をすれば、どんなことにも成功することができるのです” 彼女の答えはある意味ではウイリアムズの信条を説くものだった。

―パット・シモンズのウイリアムズF1への復帰

10年間、ウイリアムズF1は競争力に関する問題を抱えていた。そこでウイリアムズF1は高い実力の持ち主であるパット・シモンズ(後に問題解決の大きな役割を果たす人物)に白羽の矢を立てたのだった。

去年の夏にグローヴで彼のキャリアがスタートした時、チームはコンストラクターズ・チャンピオンシップの中で9位だった。そして現在は3位。勢いはこれからますます弾みをつけるはずだ。”当初私が望んでいたものよりもチームは高い所にいます” と言うのはシモンズ。”しかし、やるべきことは、まだまだたくさんあるのです”

”外から見てみれば明らかなのですが、設備は大した問題ではないと、ここに来た時に判断しました。たしかに風洞実験用のトンネルは設置から10年経っていますが、未だに素晴らしいし、他のコアな技術はトップレベルなのですから”

”しかし当時使用していたITシステムは時代遅れになりつつありました。それにエンジニアにもやや誤解があるようでした。たくさんの新しいパーツを作成し、壊れれば付け替えるといった考え方が正しいと思っていたのです”

シモンズはシステムの単純化と、エンジニアリングの厳格化を好んでいた。”われわれは、何がクルマにとって良いことなのか、そしてそれはなぜかということを既に知っています” と彼は説明する。”今年の初め、ウイリアムズF1は、速さのみに的を絞った、われわれのできる限りのことをし尽くしたマシンを投入しました。これは今までになかったことです。そして今シーズン、結果となって、努力の成果が現れ始めており、これに関してとても誇りに思っています”

一般的にテクニカル・ディレクター自らがチームの目標を掲げたりはしないのだが、シモンズは違う。”2016年にしかるべきポジションを獲得する、というのが私の野望です” とシモンズ。”そういった意味で、私は2015年のシーズンをリハーサルだと捉えています。両シーズンのために新しいマシンを投入する予定で、もちろん2015年もいい結果がでることを望んでいます”

”ここにいる皆さんと同じように私は勝利に対して強いこだわりをもっています。なぜなら負けが大っ嫌いだから。F1の世界に飛び込んで33年。勝利したレースの事は正確には覚えていませんが、負けたレースの事ははっきりと覚えています”

―F1技術の展開について

関連会社であるウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリング(以下、WAE)が抱える重要なミッションのひとつとして、F1から得たテクノロジーを工学やエネルギー市場の分野に広め、レース以上にコアビジネスを充実させる必要があるのは明確だ。

ウイリアムズと同じグローヴにある敷地内に、150人のエンジニアを擁すWAEはハイブリッド・スーパーカーであるジャガーC-X75を限定的に作り、プロジェクトを断念したあと、首脳陣は技術チームをキープし、他のプロジェクトに発展させることを決めた。

マネージング・ディレクターで、TWR(トム・ウォーキンショー・レーシング)やHSV(ホールデン・スペシャル・ビークル)をバックにつける元アストン・マーティンの凄腕エンジニアのクレイグ・ウィルソンもまた、今年の1月からウイリアムズに移籍した人のひとり。彼いわく、既に会社はエネルギー貯蓄市場におけるビジネス開拓に力を注いでおり、送電電力に依存しない小規模エネルギー・ネットワークのためにフライホイールを基礎としたデバイスを開発中で、新たなクライアントにも交渉中とのこと。

多くが機密事項であるが、軽量ストラクチャーやコンポジット、エアロダイナミクスの専門知識を活かした、軍事活動に貢献するプロジェクトなどが他にもあり、そのうちの一つとして、有名な折りたたみ自転車メーカーにも電気推進システムも考案しているのだそうだ。

”まずまずのお金を手にする事ができた今は、ビジネスを広げることに最大限の力を注いでいるのです。F1から得た技術を外部に展開し、そこで得た報酬が、再びF1を手助けすることになるでしょう” とウィルソンは締めくくった。

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