イベント・レポート

2018.8.18

エコカーカップ2018サマーフェスティバル エコドライブを競う新たなモーターレジャー

編集部より

富士スピードウェイで開催されている『エコカーカップ』をご存じですか? 編集部的にはノーチェックだったこのレース。ゴメンナサイ、実際は非常に濃いイベントでした! ということで、その真実は? AUTOCAR記者のちょっと長めのレポートにお付き合いください。

text & photo:Kouzou Ebizuka(海老塚 構造)

速いだけでは勝てない! 燃費走行も重要な耐久レース

今回、私が取材に訪れたモータースポーツ・イベントの名前は『エコカーカップ2018 サマーフェスティバル』。日本のモータースポーツの聖地である富士スピードウェイにて年間2戦で開催されているレースシリーズだ。そう、全国から集まってきたスピード自慢がミニ四駆ばりに大改造したプリウスを競わせる・・・というワケではなく、普通のナンバー付き車両での耐久レースである。しかも “エコ” と名が付くからには単にゴール時の順位だけで勝負が決まるのではないらしい。

このエコカーカップでは走行時間が3時間の『チャレンジ180』と1時間の『エンジョイ60』と2つのレースが実施され、それぞれ5回/2回以上のピットインとドライバー&コ・ドライバー交代が必須とされている。そう、サーキットレースなのにラリーのように2名乗車。また、チャレンジ180では1周3分15秒以上、エンジョイ60では4分45秒を超えるタイムで走らないとペナルティが科せられるという点もユニークだ。ペナルティは他にもピットロード違反やホワイトラインカットというサーキットでの基本的なルール違反やレース中のガス欠などにも適用される。そして最終的なリザルトは決勝レース順位(チャレンジ180は予選順位も)に燃費とペナルティを加算したもので確定される。要はコース上での順位を気にしつつも規定タイムより速くならないように走り、さらには燃費にも気を使う必要があるというように、周りの参加車との駆け引きをはじめとした戦略性の高いレースとなっているのだ。なお、エコカーカップ最高の称号である『マスター・オブ・エコカー』は、チャレンジ180とエンジョイ60の両カテゴリーでのポイントを合算して決定される。

女性だけのチームがプジョーで参戦、上位入賞をめざす

とまぁ、このレースの概要を説明したところで、「要はプリウスでサーキットをゆっくり廻って燃費競争するんでしょ」と皆さんは思っただろう。実は私もそうでした。そもそもこの取材、AUTOCARスペシャルショップ・ナビでお馴染みのプジョー専門店、オートプロがチャレンジ180に参戦しているということで編集部より取材の依頼を受けたもの。しかし自慢じゃないがこの海老塚、イマドキのクルマ事情には疎く、『新型プジョーでエコカー』なんていわれてもピンと来なかった。まったく。

「たしかに私達が参加し始めたころはほとんどがプリウスでした」とオートプロの松島代表。「でも、エコカーといってもハイブリッドやEVだけではありません。ガソリンやディーゼル車も今は燃費や環境性能を高めるための新技術が投入されています。車重の軽さと小排気量で低燃費を実現している軽自動車だってエコカーといえるでしょう。このエコカーカップは最新の環境技術が採用されているクルマならば、様々な車種が参加できるので、プジョー専門店である私達は最新のプジョーで参戦し続けています」 そう、オートプロはプジョー208エンヴィ(1.2リッターNA)や308SW(1.2リッター・ターボ)といった、小排気量エンジンを搭載したプジョー車でこのレースに参戦を続けているのだ。実際、当日の富士スピードウェイにはプリウスやアクア、インサイトといった “ザ・エコカー” からフィットやヴィッツなどのコンパクトカー、クリーンディーゼル搭載のデミオがいるかと思えば、シビックType-RやレクサスISなどおおよそエコカーとは縁遠いイメージのクルマまでがグリッドに並ぶ。さらにいえば輸入車でのエントラントも意外と多く、プジョー308の他にもトゥインゴ、カングー、ルーテシアにメガーヌR.S.といったルノー車、そしてVW up!にメルセデスCクラス、BMW M3なども見かけた。ようは近年のクルマはだいたい “エコカー” という認識でオッケーらしい。

「そしてウチのチームの特徴は5名の乗車メンバーが全員女性であるという点です。当社のスタッフやお客様、そしてお客様の奥様などで構成されていますが、必ずしも全員がモータースポーツに精通しているワケではないんです。中にはサーキット初心者どころかペーパードライバーまでいたんですよ。でも、レースといっても速ければイイというわけではなく、むしろ丁寧で確実なドライビングが要求されます。実際レース中のスピードも緩やかですし、エコカーカップは初心者や女性にも敷居が低く、楽しめるモータースポーツなんです」 “チーム・ピンクレディース” の名のもと、女性だけで結成されたレーシングチーム。監督にはレーシングドライバーの番場 琢選手を迎え、ドライビングスキルやレースでの駆け引きを研鑽してきた。その結果、ペーパードライバーだったメンバーもクルマのドライブに楽しさを感じるようになったといい、今や参戦しているエコカーカップにおいても上位入賞するまでに成長したという。

覧るより走れ? まさに参加型モータースポーツ

8月18日の富士は好天ながらちょっと涼しいという、この夏としてはとても稀な良コンディション。エントラントはチャレンジ180は76台、エンジョイ60は55台(両カテゴリーにエントリーしているチームもあり)と大盛況だ。ピットやパドックは参加車両で溢れかえっているのはレース・イベントならばお馴染みの風景だが、少し違うのは参戦しているマシンたち。ゼッケンとスポンサーステッカーが貼られている以外は完全なる街乗り車であるという点だ。ドンガラ内装にロールケージやフルハーネス、Sタイヤなんてクルマはいない。もちろん走行前には主催者による車検があるので整備不良のクルマなどはいないが、タイヤもシートもシートベルトもノーマル。本当に普段乗りしているクルマで行われる競技なのだ。

プジョー308SWでチャレンジ180に参戦するピンクレディースのピットを訪れてみると、番場監督は残念ながら本業のため欠席だった。そんな中、監督代理の松島代表の指導のもとドライバーチェンジの練習が行われていた。エコカーカップでは規定のピットインの際にドライバーおよびコ・ドライバーのチェンジも必須となっているため、スムーズな乗員交代も戦略上、重要なファクターとなるのだ。レース直前にはカートやシミュレーターでの練習も重ねてきたとのことで、チームのモチベーションは高い。前回はクラス2位ということで、さらに上を目指したいとのことだった。

さて、本日の私は奮発してコース脇からの撮影許可も取ってきたので、普段は入ることのできないメインストレートエンドのカメラマンスタンドへ陣取る。こちらも富士用に用意した500mmの超望遠レンズをのぞき込むと、陽炎に揺らめきながら76台の参加車たちがゆっくりと向かってくる。しかしながら、ダンゴ状態の一団が第1コーナーへ飛び込んでくる様子は存外の迫力だった。恐らくドライブしている側もぶつからないようにちょっとドキドキしながら走っているのではないだろうか。その後も移動して他の撮影ポイントからもレースの様子を撮影してみたが、派手なエグゾースト・サウンドやスキール音もなく、パレードランより少し速いぐらいのペースでレースは進行していた。・・・などと書いてしまうとあまり面白そうじゃない? 確かに観客目線だとスピード感もあまりないし、コース上の状況が実際の順位ではないなど、ちょっとわかりにくい。でも、スローなペースの中に実はレースならではの抜きつ抜かれつもあったり、ドライバーとコ・ドライバーの協力によるドライビング精度の追求といったラリー的要素もある。そして勝つためにはピットからの的確な指示も必須であるなど、覧るよりも仲間と参加することによりその楽しさを分かち合えるスタイルのレジャーであるといえるだろう。

果たして彼女たちの戦果は? そして最強のエコカーとは

やがて規定の時間がやってきた(今回は計時システムのトラブルで160分耐久となった)。コース上ではチェッカーフラッグが振られ、76台のエコカーたちは走行を終えた。約3時間を走りきった車両は仲間たちの拍手の中パドックに戻ってきたが、レースはこれで終了ではない。最後に全車が主催者による燃費チェックを受ける。なんといっても “エコカーカップ”、耐久レースとして良い順位でフィニッシュすることも大切だが、その中でいかに良い燃費を稼ぎ出すかが勝利のカギとなる。

プジョーの戻ってきたピンクレディースのピットに足を運ぶと、そこには充実した表情の面々がいた。「彼女たちは素晴らしいパフォーマンスを発揮してくれましたよ。ピットの指定どおりのペースで安定した周回を重ねる一方、レース順位を上げるための攻めた走りもこなしてくれました。おかげでG-2クラス2位に入賞できました!」と松島代表は満足げながらも「次は優勝ですね」と野望を口にした。

ちなみにチャレンジ180の総合優勝はディーゼルエンジン搭載のマツダ・デミオ、そしてこの後に行われたエンジョイ60は現行型のスズキ・アルトバンが征した。いずれも必ずしもハイブリッドカーでないというのも興味深い。とはいえ、両レースを通じての勝者、“マスター・オブ・エコカー” には現行型プリウスが輝いたのだから、やはりハイブリッド強しといったところか。

エコカーどころか、いまだにトラクションコントロールや電子スロットルといった現行車では当たり前となっている電制デバイスを受け入れられずにいる時代遅れの私としては、自分の浦島太郎ぶりを痛感した一日だった。『エコカーを受け入れ、その本質を目一杯に楽しむ』彼らのスタイルには感心させられることしきり。そんな姿に、何かと敷居の高いものとなってしまったモータースポーツをレジャーとして人々に開放する糸口になってくれるのかも・・・と期待せずにはいられない。
 
■Eco Car Cup 2018 公式サイト

■オートプロ

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