「雨でもオープン」でパトロール MGA 1600 デイムラーSP250(2) 多くの命を救った誇らしい歴史

公開 : 2024.02.25 17:46

数え切れない命を救った誇らしい歴史

他方、MGAは軽量で正確に操れると、オーナーのサイモン・ドワイヤー氏が説明する。「MGBは、MGAよりだいぶ重く感じられます。走行中は、路面の凹凸が細部まで伝わってきますよ」

「このクルマにはオーバードライブがなく、5速目が欲しいと感じることもあります。ギア比は、100km/h程度までは完璧。それ以上まで加速すると、ショートすぎますね」

ホワイトのMGA 1600 MkIと、ブラックのデイムラーSP250
ホワイトのMGA 1600 MkIと、ブラックのデイムラーSP250

「パトカーになったとしても、MGAは、高速道路が普及する以前に設計されたクルマといえるでしょう」。彼がもう1つ不満に感じているのが、ドアの狭さ。警官が格好良く乗り降りするには、シートを回転させる必要があるだろう。

白いMGAは、英国の変化する交通事情に対応していった、高速隊の過去を今に伝える。ランカシャー州の警察は、スピード違反を取締るパトカーを配備し、新たな時代を切り拓いた。白い塗装と、点滅するPOLICEの行灯で。

自動車の普及だけでなく、高速道路時代の到来も象徴していた。ただし、MGAには1930年代的なディティールも残り、1960年代の高速隊には課題のあるパトカーでもあった。

SP250は、落ち着いたサルーン・ベースのパトカー、ウーズレー6/99と乗り比べると、まるで別物のマシンに感じられたことだろう。「ロンドンでの新しい交通取締りを象徴するものだったと思います」。ジョンは自身の考えを話す。

パトカーとしての能力は違っても、この2台が数え切れない命を救ってきたという経歴では共通している。どちらも誇らしい歴史を持つ、ブリティッシュ・ロードスターだ。

協力:スティーブ・ウッドワード氏、ポリスカーUK社、アンバリー博物館

パトカーとして活躍 ロードスター2台のスペック

MGA 1600 MkI(1955〜1960年/英国仕様)

英国価格:940ポンド(新車時)/4万ポンド(約744万円/現在)以下
生産数:3万1501台
全長:3962mm
全幅:1473mm
全高:1270mm
最高速度:154km/h
0-97km/h加速:13.3秒
燃費:10.5km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:927kg
パワートレイン:直列4気筒1588cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:80ps/5600rpm
最大トルク:10.7kg-m/5500rpm
トランスミッション:4速マニュアル(後輪駆動)

デイムラーSP250(1959〜1964年/英国仕様)

英国価格:1539ポンド(新車時)/5万ポンド(約930万円/現在)以下
生産数:2654台
全長:4077mm
全幅:1537mm
全高:1276mm
最高速度:201km/h
0-97km/h加速:10.2秒
燃費:10.3km/L
CO2排出量:−g/km
車両重量:1006kg
パワートレイン:V型8気筒2547cc 自然吸気OHV
使用燃料:ガソリン
最高出力:142ps/5800rpm
最大トルク:21.3kg-m/3600rpm
トランスミッション:3速オートマティック(後輪駆動)

デイムラーSP250(1959〜1964年/英国仕様)
デイムラーSP250(1959〜1964年/英国仕様)

記事に関わった人々

  • 執筆

    アンドリュー・ロバーツ

    Andrew Roberts

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジョン・ブラッドショー

    John Bradshaw

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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