【ワークス・ラリーマシンの1台】トライアンフTR4 ほぼノーマルで戦った1962年 前編

公開 : 2021.04.17 07:05

ワークス・マシンとして活躍したトライアンフTR4。アメリカで消息不明になっていましたが、見事な復活を遂げました。3 VCのナンバーを付けた貴重な1台をご紹介しましょう。

もくじ

もとはトラクターと同じ4気筒エンジン
モータースポーツ部門の再始動
1962年に選ばれた4戦のラリーイベント
ほぼ純正のままで初戦へ挑む

もとはトラクターと同じ4気筒エンジン

text:Julian Balme (ジュリアン・バルメ)
photo:Luc Lacey(リュク・レーシー)
translation:Kenji Nakajima(中嶋健治)

 
ツイン・ウェーバーキャブレターが放つ、乾いた吸気音。なんの変哲もないエンジンでも、サウンドが良いだけで有能なユニットのように感じる。

トライアンフTR4に載る、鋳鉄製のスタンダード・ヴァンガード用エンジンも同様。ジョヴァンニ・ミケロッティが描き出した美しいロードスターに期待を膨らませて乗り込むが、いつもその気持は少しだけ裏切られる。

トライアンフTR4 ワークスマシン(1962年)
トライアンフTR4 ワークスマシン(1962年)

1対のカムシャフトとサイドドラフトのキャブレターを備え、エンジンの見た目もエキゾチック。ベビー・マセラティのようにも思わせるが、実際はそうでもない。

ペールブルーが鮮やかな、このトライアンフTR4を試乗させてもらった第一印象も、さほど違わなかった。見た目も、通常のTR4とさほど違わない。

長いボンネットの内側に収められているのは、ファーガソン・トラクターと基本的には同じユニット。SUキャブレターで呼吸する2.0Lユニットとして、英国の農家では見慣れた存在だった。

それでも、イタリアンなスタイリングは、工業機械的な心臓を美しく引き立たせる。さらに3 VCのナンバーを付けた今回のTR4は、ツインキャブとイタリア人らしい創意工夫でパフォーマンスが引き上げられている。

一見すると、1961年に発売された通常のTR4と大差はない。容姿の違いといえば、ラリー用に3台体制が組まれた1台としてバンパーが省かれ、サイドグリルとスポットライトが追加されているくらいだろう。

モータースポーツ部門の再始動

冷えたエンジンを目覚めさせると、エンジンルームの右側からキャブレターの吸気音が沸き立つ。小さなロードスターが、特別なマシンであることを伝えるように。

このクルマは、トライアンフTR4としては究極のファクトリーモデルといえる。極めて限定的な開発費用の中で作られた、貴重な1台だ。その歴史を、グラハム・ロブソンとともに振り返ってみよう。

トライアンフTR4 ワークスマシン(1962年)
トライアンフTR4 ワークスマシン(1962年)

TR4とは別物の、3台のTRSがルマン24時間レースを完走したのは1961年。ところがその直後、トライアンフの親会社だったレイランド社は、ケン・リチャードソン率いるスタンダード・トライアンフのモータースポーツ部門を解散した。

半年後、若き開発エンジニアが技術ディレクターのハリー・ウェブスターのオフィスへ招かれた。モータースポーツ・チームを再始動するべく、ラリーに造詣の深い人物をリーダーに据えることにしたのだ。

1962年、トライアンフ・チームのマネージャーに就いたのはグラハム・ロブソン。ウェブスターは事前にロブソンへ会い、トライアンフでモータースポーツに適しているモデルがあるか相談していたという。

彼は、発表直前だったTR4なら競争力があるだろうと回答した。適切な内容で改良された仕様なら。

わずかな予算が与えられたロブソンは、小さなチームのためにメカニックを募集。クルマをレース規格に合致させる用意と、参戦すべき次期シーズンのイベントを整理した。

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