自動車史で最高峰の1台 BMW 5シリーズ 528i(E39型) 輝かしい1990年代のクルマ(4)

公開 : 2025.04.26 19:05

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恐らく世界最高のクルマ 上品なスタイリング

4代目BMW 5シリーズへ、AUTOCARが初めて試乗したのは1995年。「恐らく世界最高のクルマ」だと、当時は仕上がりを称えた。かなり思い切った評価といえたが、数か月後に実施した詳細データテストでも、その判断は揺るがなかった。

厳しい視点での試乗を経て、我々はE39型の528iに満点を与えている。「あらゆる面で、完璧に近いクルマ」という、絶賛の言葉を添えて。

BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)
BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

それから30年が過ぎた。筆者の目前には、エイドリアン・アルデア氏が大切に載っている、1999年式の528iが停まっている。その端正な姿に、期待は自ずと高まってしまう。

スタイリングはエレガントといっていい。バランスが良く、上品にまとまっている。この後継となったE60型5シリーズには、デザイナーのクリス・バングル氏が、挑戦的なスタイリングを与えた。エッジの立った個性的な処理に、我々は衝撃を受けた。

颯爽と吹け上がる自然吸気のシルキーシックス

インテリアも素晴らしい。仕上がりは高品質で、レイアウトは論理的。上等な素材がくまなく用いられ、見た目の良いダッシュボードの使い勝手は素晴らしいのヒトコト。

カウルの付いたメーターパネルには、大小4枚のアナログメーター。液晶モニター式の方が見やすいと考えている人は、E39型5シリーズの運転席へ1度座ってみて欲しい。それは本当だろうか。

BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)
BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)

流石に、運転体験には時間経過が漂う。自然吸気の2.8L直列6気筒エンジンは、現代のターボユニットと比べると、低域でのトルクが細い。それでも、まさにシルキーシックス。滑らかにパワーが生み出され、耳障りの良いサウンドが放たれる。

高回転域へ颯爽と吹け上がる。低域での若干の力不足など、些細なことに思えてくる。

5速ATは、現代のユニットのように鋭く反応することはない。それでも変速は滑らか。ギアの切り替わりは、殆ど気にならない。高速域での風切り音は最小限といえ、メカニカルノイズも小さく耳へ届くだけ。洗練度も素晴らしい。

誠実な技術力 自動車史で最高峰の1台

このクルマには、社外サスペンションが組まれている。オリジナルの、卓越した乗り心地と操縦性のバランスを味わうことは難しいが、反応が正確で機敏なことは明らか。

E39型5シリーズは、現行型の3シリーズと同等の大きさだから、扱いやすい。誠実な技術力が、輝きを与えている。コストを気にせず、入念に開発された印象を受ける。お安くはなかったが。

BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)
BMW 5シリーズ(E39型/1996〜2003年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ダッシュボードの裏側には、蓄熱装置が付いている。エンジンが残した熱を最大2日間蓄えられ、寒い冬でも30秒ほどでヒーターが効き出すという、うれしい機能だった。

それではE39型5シリーズは、史上最高のクルマといえるだろうか? 恐らく、違うとは思う。それでも、最高峰の1台であることは間違いない。自動車開発の縛りが緩かった時代に達成できる水準を、今でも顕示している。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・ディスデイル

    James Disdale

    英国編集部ライター
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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