今も驚きと喜びを与えるデザイン アウディTT(初代) 輝かしい1990年代のクルマ(5)

公開 : 2025.04.26 19:06

1990年代がクルマ好きにとっての黄金期だった? 今にはない純粋さと個性が宿るモデルたち 愛おしい気持ちは思い込みではないのか? UK編集部の気になる10台を試乗で振り返る

2025年でも驚きと喜びを与えるデザイン

驚きと喜びは、クルマのマーケティングで重要なキーワードといえる。1990年代のモデルは、それを実体験できることが少なくなかった。初代アウディTTのインテリアは、25年前でも2025年でも、文字通り驚きと喜びを与えてくれる。

素材や質感へのコダワリは、現在の同価格帯のモデルの比ではない。ドアハンドルは、デザイン雑貨のよう。シートヒーターのスイッチは、回していくと点灯エリアが増える。ステレオユニットには、TTのロゴが入ったカバーが掛かっている。特別感が漂う。

アウディTTとフォード・モンデオ
アウディTTとフォード・モンデオ    マックス・エドレストン(Max Edleston)

工業デザインの祖、バウハウスの流れを汲むような傑作といっていい。新車時にショールームを訪れた人は、圧倒されたのではないだろうか。今でも、欲しいと思わせる訴求力がある。

毎日乗れる最高のモダンクラシック

運転体験に、そこまでの衝撃はなかったかもしれない。乗り心地は優れていたものの、走りの面白いクーペが当時は複数存在していた。TTは、ベースとなったハッチバック、ゴルフに近いものといえた。

それでも228psの4気筒エンジンは、充分な速さとゆとりを与えてくれる。現在でも、軽快だと感じられる。

アウディTT(初代/1998〜2006年/英国仕様)
アウディTT(初代/1998〜2006年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

弱点といえたのは、カーブを描いた美しいボディが、僅かな揚力を生み出したこと。四輪駆動は高速域で優れた安定性を発揮すると信じていた、一部のドライバーを驚かせるのには充分といえた。

これを受けてアウディは、サスペンションとアンチロールバーの交換に加えて、スタビリティ・コントロールとリアスポイラーの追加を決定。ディーラーへ持ち込めば、販売済みの車両でも対応を受けられた。英国では、95%のオーナーが実施したという。

ただし、リアのスポイラーはない方が美しい。今回の車両には備わらず、オリジナルの美しさは乱れていない。

初代TTは、毎日乗れる最高のモダンクラシックだと思う。筆者も手元に別のアウディがなければ、中古車を探そうと思うはず。

アウディTT 1.8クワトロ225(初代/1998〜2006年/英国仕様)のスペック

英国価格:2万9650ポンド(新車時)
最高速度:243km/h
0-100km/h加速:6.1秒
車両重量:1395kg
パワートレイン:直列4気筒1781cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:228ps/5900rpm
最大トルク:28.4kg-m/2200-5500rpm
ギアボックス:6速マニュアル(四輪駆動)

この続きは、輝かしい1990年代のクルマ(6)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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