ランボルギーニ・ディアブロ 濡れた滑走路を簡単に飛ばせる 輝かしい1990年代のクルマ(6)

公開 : 2025.04.27 19:05

1990年代がクルマ好きにとっての黄金期だった? 今にはない純粋さと個性が宿るモデルたち 愛おしい気持ちは思い込みではないのか? UK編集部の気になる10台を試乗で振り返る

密接に関係していた製造コストと販売価格

これまで触れてきたように、1990年代のクルマが恋しく感じる理由は沢山ある。鮮やかなカラーに、臆することないサウンド、濃密なメカニズムとの一体感。そして、価格もより実際に基づいていた。

近年のモデルでは、加速や音響を楽しめる高性能なクルマを所有する充足感が、価格へ反映されている。つまり、マーケティング寄りにある。しかし30年前は、製造コストと販売価格は密接に関係していた。得られる興奮は、より身近にあったといえる。

ランボルギーニ・ディアブロ(1990~2001年/英国仕様)
ランボルギーニディアブロ(1990~2001年/英国仕様)
    マックス・エドレストン(Max Edleston)

1995年に、四輪駆動ではなく後輪駆動へ簡素化されたランボルギーニ・ディアブロ SVは、通常のディアブロより安価だった。英国では20%も。お買い得だったかと聞かれると、即答はできないが。

今回のイエローのディアブロ SVは、ヴォグゾールロータス・カールトンのレストアを副業で手掛ける、ジェームズ・ボーモント氏の愛車。完璧な状態が維持されている。1996年7月に試乗テストを実施した車両、そのものでもある。

濡れた滑走路を、驚くほど簡単に飛ばせる

快適でなく、手懐けにくく、野獣のような体験をディアブロには期待してしまう。517psの古いイタリアン・スーパーカーとして、ステアリングやトラクション、シャシーバランスなどは、理想とは違うだろうと構えてしまう。

しかし実際は、確かに驚異的ではあっても、アクセルペダルを蹴飛ばすのを躊躇するような野蛮さはない。軽く濡れた滑走路を、驚くほど簡単に飛ばせた。

ランボルギーニ・ディアブロ(1990~2001年/英国仕様)
ランボルギーニ・ディアブロ(1990~2001年/英国仕様)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

5.7L V12エンジンは、4000rpm前後からクレッシェンドし、MTは使いこなすのに練習が必要だろう。内装の品質が、優れるともいい難い。それでもクラッチペダルが踏みにくいわけではなく、ステアリングも少しの力で回せる。威圧感は大きくない。

ジオット・ビッツァリーニ氏が、1960年代に設計したユニットを先祖に持つV12エンジンは、ムルシエラゴ以降のユニット以上にたくましく、胸が苦しくなるような響きを奏でる。傑出したエンジンが、ディアブロの中心にある。

適切なメンテナンスを絶やさなければ、ディアブロ SVは素晴らしいクラシック・スーパーカーだ。運転は想像するほど難しくなく、間違いなく楽しい。

ランボルギーニ・ディアブロSV(1995~1999年/英国仕様)のスペック

英国価格:12万4995ポンド(新車時)
最高速度:320km/h以上
0-100km/h加速:4.2秒
車両重量:1567kg
パワートレイン:V型12気筒5707cc 自然吸気
使用燃料:ガソリン
最高出力:517ps/7100rpm
最大トルク:59.0kg-m/5200rpm
ギアボックス:5速マニュアル(後輪駆動)

この続きは、輝かしい1990年代のクルマ(7)にて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    リチャード・レーン

    Richard Lane

    役職:ロードテスト副編集長
    2017年よりAUTOCARでロードテストを担当。試乗するクルマは、少数生産のスポーツカーから大手メーカーの最新グローバル戦略車まで多岐にわたる。車両にテレメトリー機器を取り付け、各種性能値の測定も行う。フェラーリ296 GTBを運転してAUTOCARロードテストのラップタイムで最速記録を樹立したことが自慢。仕事以外では、8バルブのランチア・デルタ・インテグラーレ、初代フォード・フォーカスRS、初代ホンダ・インサイトなど、さまざまなクルマを所有してきた。これまで運転した中で最高のクルマは、ポルシェ911 R。扱いやすさと威圧感のなさに感服。
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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