狂気じみた?「280km/h以上のA3」 アウディRS3へ試乗 稀代の超高温ハッチバック

公開 : 2024.04.02 19:05

動力性能は驚異的 一般道でダイナミックさを堪能

A3の小さなボディに約400馬力だから、動力性能は驚異的。不自然に加飾されていない、5気筒エンジンの咆哮を放ちながら、0-100km/h加速を3.8秒でこなす。

ターボラグが存在し、中間加速は若干マイルド。しかしターボブーストが高まれば、激しいダッシュが始まる。僅かなタメがあるおかげで、実際以上に速く感じられる。この特徴的なエンジンが、RS3の運転体験の中心にある。

アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)

7速ATは、ハード任せでは、稀に変速を躊躇する。幹線道路への合流で鋭く加速しようと思っても、ヤキモキする瞬間はあるかもしれない。

姿勢制御はタイトだが、乗り心地が落ち着かないわけではない。四輪駆動システムは、不自然さを強く感じさせることなく、操縦性を巧みに引き上げている。

オプションのアダプティブ・スポーツサスは、市街地で快適な乗り心地を披露。穏やかなドライブモード時はステアリングホイールも軽く、切り始めからリニアに反応し扱いやすい。激しい性格を宿しつつ、アウディらしい上品さも忘れていない。

先代から大きく進化したのが、一般道でのダイナミックさ。長く続く高速コーナーでのバランスは向上し、スポーティなドライブモード時は、手のひらへ明瞭なフィーリングが伝わる。

知的なドライブトレインはトルクを随時変化させ、姿勢を制御。タイトコーナーでは、リアタイヤを踊らせるまでに、相当にフロントタイヤの負荷を高める必要はある。自然な旋回性を堪能することは、難しいかもしれない。

歴代のRS3で最も熟成された内容

だがそれが、高度なトルクベクタリング機能を備えた、四輪駆動のホットハッチらしいマナーでもある。従来以上に身のこなしはシャープで、フロントのグリップが目覚ましいことは間違いない。

現行のRS3が発表された時、サーキットで「RSトルクリア・モード」、通称ドリフト・モードを試す機会があった。きっかけを与え、必要なカウンターステアを当て続ければ、一定の半径で痛快なドリフトを延々楽しんでいられる。

アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)
アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)

燃費は、カタログ値で11.1km/L。複数の条件を走らせた今回の平均は、10.0km/Lへ届かなかった。高速道路を淡々と走れば、10.5km/Lは超えられるだろう。

現行型は、アウディがこれまでリリースした歴代のRS3で、最も熟成された内容にある。しかし価格も相応に上昇し、望ましいオプションを盛り込むと、手を伸ばしにくい値段になってしまう。

5気筒エンジンを積まないが、フォルクスワーゲン・ゴルフ Rは同等に速くよりお手頃。メルセデスAMG A 45も4気筒だが、車内の雰囲気はよりゴージャス。6万5000ポンド(約1229万円)を費やす前に、よく比較する価値はあるだろう。

一方で、280km/h以上で走れるA3という狂気じみたアイデアに、強く惹かれる気持ちも理解できる。過去にないほど、活き活きとした体験を謳歌できる。RS3が欲しいと思ったら、他のモデルは視界に入らなくなりそうだ。

◯:個性豊かな5気筒エンジン 日常的な乗りやすさ 比較的控えめなルックス
△:ホットハッチとしては高額 数字ほど速くは感じられないかも 通常のA3と大きく違わないインテリア

アウディRS3 スポーツバック・フォアシュプルング(英国仕様)のスペック

英国価格:6万5705ポンド(約1242万円/試乗車)
全長:4389mm
全幅:1851mm
全高:1412mm
最高速度:289km/h
0-100km/h加速:3.8秒
燃費:11.4-12.0km/L
CO2排出量:190-201g/km
車両重量:1570kg
パワートレイン:直列5気筒2480cc ターボチャージャー
使用燃料:ガソリン
最高出力:399ps/5600-7000rpm
最大トルク:50.9kg-m/2250-5600rpm
ギアボックス:7速デュアルクラッチ・オートマティック

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    英国編集部ロードテスト・エディター
  • 執筆

    マレー・スカリオン

    Murray Scullion

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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