環境配慮の4気筒でも407ps メルセデスAMG C 43へ試乗 本音は「CLE 53」のエンジンが欲しい

公開 : 2025.04.05 19:05

ターボラグのないレスポンス 音響は控え目

公道へ出てみれば、複雑な電動化システムはあくまでも影武者。それでも、低速域ではターボラグのないレスポンスへ気付ける。アクセルペダルを一度戻し、再び踏み込んでも、即座にパワーが湧く。吸気音は、従来より僅かに良く聞こえるようだ。

パワーバンドは極めて広いが、試乗車の場合は、7000rpmに設定されたレッドラインまで引っ張れなかった。マニュアルモードで9速ATのギアを指定しても、6800rpmの手前でリミッターが介入するためだ。

メルセデスAMG C 43 4マティック・サルーン(欧州仕様)
メルセデスAMG C 43 4マティック・サルーン(欧州仕様)

それでも、すこぶる速い。0-100km/h加速は4.6秒と主張されるが、レーススタート・モードを選べば、まったく疑う余地はないだろう。燃費は、カタログ値で11.0km/Lがうたわれる。

反面、2.0L 4気筒エンジンとして聴き応えはあるものの、AMGらしいドラマチックな音響は楽しめない。アクセルペダルを一気に戻せば、アフターファイヤーのグズリ音も放たれるとはいえ、一部はデジタル的に増幅されたもの。高速巡航時は、ほぼ無音だ。

乗り心地は、ドライブモードに関わらず低速域で硬め。しかし、速度域が高くなるほどしっとり快適に転じる。スポーツプラス・モードでも路面の凹凸を巧みに処理し、公道での選択にも耐える。

ステアリングの反応は正確でリニア。確かなフィードバックが、僅かに手のひらへ伝わってくる。パワーアシストの重み付けも丁度いい。

環境配慮型になったC 43 動力性能は低下せず

四輪駆動だから、確固たるトラクションを備え、グリップ力も秀抜。軽く濡れたフランスのワインディングを攻めても、馬力や慣性を受け止めきれない場面はなかった。

コーナリングは基本的にニュートラルで、狙ったラインをヒタヒタと追うタイプ。意図的にきっかけを与えても、リアアクスルを流しつつ蹴り出すような仕草は抑えられている。動的能力は非常に高いが、躍動的とまではいえないだろう。

メルセデスAMG C 43 4マティック・サルーン(欧州仕様)
メルセデスAMG C 43 4マティック・サルーン(欧州仕様)

従来より環境配慮型になった、C 43。それでいてV6ツインターボ時代から、動力性能が低下したわけではない。得られる感動は、少し薄まったとしても。

ただし、最新のS5はコーナリングの魅力を大幅に高め、V6エンジンを搭載する。M340iは、インテリアの質感で及ばなくても、直6エンジンで素晴らしい体験へ浸れる。新しいCLE 53のパワートレインをC 43へ持ってくることは、叶わない願いなのだろうか。

◯:リニアなエンジンのレスポンス 非常に高いトラクション ステアリングのフィードバックが明瞭で反応を探りやすい
△:AMGらしい聴覚的なドラマチックさが薄い 低速域での乗り心地が硬い 若干反応の鈍い9速AT

メルセデスAMG C 43 4マティック・サルーン(欧州仕様)のスペック

英国価格:6万7500ポンド(約1316万円)
全長:4791mm
全幅:1824mm
全高:1437mm
最高速度:249km/h
0-100km/h加速:4.6秒
燃費:11.0km/L
CO2排出量:206g/km
車両重量:1765kg
パワートレイン:直列4気筒1991cc ターボチャージャー+ISG
使用燃料:ガソリン
最高出力:407ps/6750rpm
最大トルク:50.9kg-m/5000rpm
ギアボックス:9速オートマティック(四輪駆動)

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

関連テーマ

おすすめ記事

 

人気記事