【第8回】サイトウサトシのタイヤノハナシ~雨のドライブは楽し! 奥深きウエットグリップ~

公開 : 2025.05.21 17:05

同じグレードでも幅がある?

気温とタイヤのグリップの関係にまつわる逸話は、わりと多くあります。

例えば、あるオールシーズンタイヤの試乗会でのこと。サマータイヤとオールシーズンタイヤのウエットブレーキテストを行いました。ウエットブレーキの制動距離は、サマータイヤのほうが若干短くなるはずだったのですが、実際に試乗してみると、オールシーズンタイヤのほうが短くなってしまったのです。

ウエットグリップは温度依存性が強いため、テストの時期などが影響することも(写真はイメージです)。
ウエットグリップは温度依存性が強いため、テストの時期などが影響することも(写真はイメージです)。    佐藤亮太

これは、テストしたのが11月で、気温がかなり低くなっていたのが(具体的には気温10度以下)理由だと考えられます。

先に書いたように、タイヤには適正作動温度域というものがあるわけですが、オールシーズンタイヤは一般的にサマータイヤより低い気温でもゴムが仕事をするように作られています。一方でスタッドレスほどは適正作動温度が低くはないものの、ある程度低く設計されているため、こういう事態になったのでしょう。

また、こんなこともありました。

銘柄は書けませんが、ウエットbのグレーディングを得ているタイヤを履いていた時のこと。乗り心地も燃費も良いので、わりと気に入って履いていたのですが、秋も終わりころになって冷たい雨が降った時、路面が凍結しているの? というくらい盛大に滑って、肝を冷やしたことがあったのです。

それまでグリップが優れているわけではないけれど、特に問題なし、と思っていたのですが……。ビックリしました。

同じb評価でも、いくらかウエットグリップには幅があるのです。考えてみれば上限と下限があるわけですからこれは当然。

しかもウエットグリップは温度依存性が強いので、路面温度、大気温度、散水温度などが好ましい時期であれば、良いグレーディングが取れることもあるでしょうし、設計時ターゲットにしたグレーディングが取得しやすい適切な気温、気候を敢えて選んでテストすることが……ないとは言い切れません。

冒頭に雨が楽しいというようなことを書きましたが、実際のところいろんなことがわかったり感じられたりするので、楽しいのは嘘じゃありません。まあ、それはそれとして、ウエットグリップのいいタイヤを履くと、雨でもヒタッと路面に吸い付くような安定感、安心感を手に入れることができます。

それに加えて排水性のいいトレッドパターンの組み合わせは、雨の日のドライブを楽しく安心したものにしてくれると思います。

タイヤが古くなるとウエットグリップはどんどん悪くなりますし、摩耗して溝が浅くなれば耐ハイドロプレーニング性能は落ちていきます。

まだ時期には少し早いですが、梅雨や夏のスコールのような雨のシーズンがやってきます。タイヤのメンテナンスを忘れずに。

記事に関わった人々

  • 執筆

    斎藤聡

    1961年生まれ。学生時代に自動車雑誌アルバイト漬けの毎日を過ごしたのち、自動車雑誌編集部を経てモータージャーナリストとして独立。クルマを操ることの面白さを知り、以来研鑽の日々。守備範囲はEVから1000馬力オバーのチューニングカーまで。クルマを走らせるうちにタイヤの重要性を痛感。積極的にタイヤの試乗を行っている。その一方、某メーカー系ドライビングスクールインストラクターとしての経験は都合30年ほど。

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