【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#34 渡辺敏史、スッポン丸に乗る!

公開 : 2026.05.15 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第34回は『渡辺敏史、スッポン丸に乗る!』を語ります。

スッポン丸はオードリー・ヘプバーン!

我が愛車のスッポン丸(フェラーリ328GTS)は、すべてが最高だ。その素晴らしさは、生産から約40年後の今乗ると、時代が生んだ奇跡に思える。

適度な加速の鋭さと、スタビリティの低さが織りなすハーモニーは、すべてのドライバーを冒険者にしてくれる。

清水草一(右)の愛車『スッポン丸』を渡辺敏史(左)が試乗!
清水草一(右)の愛車『スッポン丸』を渡辺敏史(左)が試乗!    清水草一

そしてもちろんデザインはあまりにもキュート。女優で言えばオードリー・ヘプバーンだ。

そんなスッポン丸に試乗して、同業者の渡辺敏史氏(以下ナベちゃん)はどう感じるのか。ナベちゃんは、正確無比な新車インプレッションに定評のある自動車ライターであり、自身、FD (3代目RX-7)を所有する古いスポーツカー愛好者でもある。

当日はあいにくの天気で、直前に雨が降り出した。これじゃ限界性能を試してもらうことはできないが(アタリマエ)、とにかく味見してもらいたい。

広いところまで私がクルマを移動させ、そこでナベちゃんに運転席を譲った。その瞬間が、最もドラマチックだった。

その瞬間が最もドラマチック!

ナベちゃんは身長181センチ、体重約100キロの巨漢。一方、スッポン丸のキャビンは極めて狭く、特に天井がかなり強烈に低い。乗り込もうとする彼を見た瞬間、ひょっとしてムリかも? という危惧が芽生えた。

オレ「の、乗れる?」

スッポン丸に何とか乗り込む途中の渡辺敏史(身長181センチ、体重約100キロ)。
スッポン丸に何とか乗り込む途中の渡辺敏史(身長181センチ、体重約100キロ)。    清水草一

ナベ「ちょっとシート下げさせてもらいます」

ナベちゃんは動きの渋い328のシートをいっぱいまで下げ、狭いキャビンに巨体を少しづつ押し込んだ。一番キツそうなのは、ぶっといフトモモをステアリングの下に通すところだ。

オレ「は、入った!」

それはかなりムリヤリな姿勢だった。ステアリングは大きく開いた股ギリギリ。幼児用の足漕ぎ車に大人が乗っているみたいに見える。

次なる難題はシートベルトだった。スッポン丸のシートベルトはロック機構の調子が悪く、1センチづつ辛抱強く小刻みに引き出さねばならない。ナベちゃんは、窮屈な姿勢に耐えつつ、なんとかそれを実行した。ボンデージショーみたいに。

昔のレーシングカーのように!

ナベ「はぁ。では発進します」

オレ「よろしく!」

「328ってこんなに乗りやすかったでしたっけ?」
「328ってこんなに乗りやすかったでしたっけ?」    清水草一

ナベ「1速、ここですよね」

オレ「うん。ここ」

ナベ「あれ、ずいぶん発進ラクですね」

オレ「そうなんだよ! すごいトルクあるでしょ?」

ナベ「エンジンレスポンスの鋭さからすると、ストッて止まっちゃいそうですけど、粘るんですね」

オレ「うん。不思議なほど!」

328のエンジンレスポンスの良さと低速トルクの両立は、排気系の軽さとフライホイールの適度な重さよるのかもしれない。アクセルを軽く煽れば、昔のレーシングカーのように軽やかに吹け、それでいて3速発進すら可能なのである。

雨の中、ワイパーを動かしながらスッポン丸は走る。ワイパーを動かしたのは6年ぶりか。久しぶりすぎて動くかどうか不安だったけど、動いてよかった。

オレ「328の助手席、意外と快適だなぁ」

ナベ「運転席も快適ですよ。328ってこんなに乗りやすかったでしたっけ?」

オレ「考えようによっては、快適GTだよね!」

ナベ「そうですね。速度レンジを上げるとわかりませんけど。ウフフ~」

328は古いだけに、個体差がデカい(たぶん)。そしてスッポン丸のコンディションは猛烈にスバラシイ(たぶん)。それでも一度、走行中に炎上したんだけど。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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