欧州に「軽自動車」規格導入? 小型・安価な『Eカー』カテゴリー開発へ EU

公開 : 2025.09.13 07:05

EUは新しい小型低価格車カテゴリー『Eカー』の開発に取り組む姿勢を示しています。中国メーカーの存在感が増す中、欧州の産業と雇用を守りながら、生産コスト削減とCO2排出量の低減を目指しています。

中国メーカーへの対抗意識も

欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、自動車産業の保護を図るため、業界トップと連携して『Eカー(E-car)』と呼ばれる新たな小型低価格車カテゴリーの開発に取り組む方針を示した。

7月、ステランティスのジョン・エルカン会長と当時のルノー・グループのルカ・デ・メオCEO(当時)は、安全規制を緩和した小型車カテゴリーの創設を提案した。生産コスト削減とCO2排出量の低減を目指すものだ。

『Eカー』カテゴリーは日本の軽自動車規格が大まかなベースとなっている。
『Eカー』カテゴリーは日本の軽自動車規格が大まかなベースとなっている。

この提案は日本の軽自動車規格をモデルとしている。軽自動車は日本国内の販売の約40%を占める。

ドイツで開催されたミュンヘン・モーターショーでは、ルノー・グループの新CEOであるフランソワ・プロヴォスト氏、BMWグループのオリバー・ジプセ氏、ステランティスの欧州事業を率いるジャン=フィリップ・インパラート氏ら多数の自動車業界トップが、2035年までに内燃機関車の新車販売を禁止する現行のEU規制への緊急対応を訴えた。彼らは、この規制が中国の競合他社からの脅威に直面している欧州自動車産業に打撃を与えるリスクがあると主張している。

ジプセ氏とインパラート氏はともに、走行中のCO2排出量だけを測るのではなく、車両のライフサイクル全体での排出量を評価する計画を提案した。これにより、自動車メーカーはさまざまなパワートレインを自由に使いながら、CO2排出量削減を目指すことができるようになる。

フォン・デア・ライエン委員長は一般教書演説で、欧州自動車産業を「我々の経済と産業の柱」と表現し、「数百万の雇用が自動車産業に依存している」と述べた。

委員長は、自動車メーカーに義務付けられている2025年CO2排出量削減目標に柔軟性を持たせていることを指摘したうえで、「技術中立性を尊重しつつ、現在2035年の見直しを準備中です」と付け加えた。

また、提案に上がった『Eカー』カテゴリーへの支持も表明し、「数百万の欧州市民が手頃な価格の欧州車を購入したいと考えています。そのため欧州市場向けだけでなく、世界的な需要急増にも対応するため、小型で手頃な価格の車両にも投資すべきです。これが、業界と協力して新たな小型低価格車イニシアチブを提案する理由です」と述べた。

「欧州には独自のEカーが必要だと考えています。『E』とは環境、すなわちクリーンで効率的、軽量であること。『E』とは経済性、すなわち人々が手頃な価格で入手できること。『E』とは欧州、すなわち欧州のサプライチェーンを通じて欧州で生産すること。中国など他の国にこの市場を独占させるわけにはいきません」

新たなEカーカテゴリーで、どのパワートレインが認められるかはまだ明確ではない。しかし、フォン・デア・ライエン氏は、「いずれにせよ、未来は電気であり、欧州もその一部となるでしょう。自動車の未来、そして未来の自動車は欧州で作られるべきです」と述べている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    ジェームス・アトウッド

    James Attwood

    役職:雑誌副編集長
    英国で毎週発行される印刷版の副編集長。自動車業界およびモータースポーツのジャーナリストとして20年以上の経験を持つ。2024年9月より現職に就き、業界の大物たちへのインタビューを定期的に行う一方、AUTOCARの特集記事や新セクションの指揮を執っている。特にモータースポーツに造詣が深く、クラブラリーからトップレベルの国際イベントまで、ありとあらゆるレースをカバーする。これまで運転した中で最高のクルマは、人生初の愛車でもあるプジョー206 1.4 GL。最近ではポルシェ・タイカンが印象に残った。
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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