1930年代のスーパーカーを今も作り続ける英国工場 歴史が詰まった『アルヴィス』のワークショップへ潜入

公開 : 2026.02.16 17:05

英国自動車産業の中心地ウェスト・ミッドランズに、創業100年以上の歴史を持つアルヴィスのワークショップがあります。今でも車両の整備やレストア、さらにはコンティニュエーションモデルの生産を行っています。

100年以上の歴史を誇る英国メーカー

錆びついた古い南京錠をこじ開け、きしむドアを押し開けて、愛情とレストアを心待ちにしているクラシックカーを発見する。これは、多くのクルマ好きにとっての夢だろう。このように納屋や倉庫で長く保管されていたクルマを見つけることを「バーンファインド(barn find)」と呼び、同ジャンルに特化したYouTubeチャンネルも存在する。

だが、そうした手間がすべて省かれたらどうだろう? 英国ケニルワースにあるアルヴィス社を訪れれば、まさにそれが実現する。

英国にあるアルヴィスのワークショップを訪問した。
英国にあるアルヴィスのワークショップを訪問した。

アルヴィスは英国自動車産業の中心地ウェスト・ミッドランズに深く根ざした企業だ。シンクロメッシュギア、前輪駆動、独立懸架式フロントサスペンションなど、多くの新技術を先駆けて導入した。1920年代には前輪駆動のグランプリレーサーを戦わせたこともある。

アルヴィスの自動車生産は1968年に終了したが、乗用車部門は元従業員によるコンソーシアム(共同事業体)に移管され、今日までアルヴィス車を丹念に整備する場所として存続している。

30年以上この事業を営むアラン・ストート氏は「当時は自動車コレクターなんて存在しませんでした」と語る。「古いクルマを持っている人は、貧乏か変わり者のどちらかだと思われていました。アルヴィスも自社の乗用車部門が10年以上続くとは想像もしていなかったでしょう」

すべての車両の履歴を保管

今も建物内には純正部品が豊富に保管されている。天井まで届く棚が何十列も並び、何時間でも眺めていられる。オリジナルの設計図や所有者の記録もすべて残っている。クラシックカー市場でアルヴィス車を購入すれば、その車歴を網羅した資料をここで見ることができる。

「『このアルヴィスを買ったんですけど』というお客様がいらっしゃったら、新車時からの完全な履歴を印刷してお渡しします」とストート氏は言う。その証拠に、彼は何気なくフィリップ王子の工場宛ての資料原本を広げ、紅茶を飲みながらパラパラとめくって見せてくれた。当然ながら、こぼれないように十分に距離を置いて……。

アルヴィスのワークショップ
アルヴィスのワークショップ

「年間150~200台が当ワークショップに届きます。多くの人が長期間にわたって所有しており、単なる移動手段ではなく、クルマそのものに興味を持って購入されたのです。『50年代の学生時代からこのクルマを持っていて、娘の結婚式にこのクルマで参列すると約束したんだ』と、いくつかの箱とラダーシャシーを携えて来店するお客様も珍しくありません。わたし達が扱うのはそういうクルマです」

アルヴィスは創業から49年間で約2万2000台を生産したが、現存するのは5000台弱。しかし、ストート氏の指導のもと、その数は徐々に増えている。アルヴィスは現在、部品供給と整備業務に加え、継続生産事業を展開しているのである。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブン・ドビー

    Stephen Dobie

    英国編集部ライター
  • 翻訳

    林汰久也

    Takuya Hayashi

    1992年生まれ。幼少期から乗り物好き。不動産営業や記事制作代行といった職を経て、フリーランスとして記事を書くことに。2台のバイクとちょっとした模型、おもちゃ、ぬいぐるみに囲まれて生活している。出掛けるときに本は手放せず、毎日ゲームをしないと寝付きが悪い。イチゴ、トマト、イクラなど赤色の食べ物が大好物。仕事では「誰も傷つけない」「同年代のクルマ好きを増やす」をモットーにしている。

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