悩みや不安を吹き飛ばす疾走感 モーリス・ミニ・クーパーS(2) 宙に浮く内側のフロントタイヤ

公開 : 2026.02.15 17:50

BMCのワークスマシン、クーパーS 高回転型の1071cc Aシリーズにハイドロ・サス カーブへ貪欲に食らいつく快感 悩みや不安を吹き飛ばす疾走感 UK編集部が小さなラリー・ミニを振り返る

970ccと1275ccエンジンへ順に換装

BMCのワークス部門が用意した、モーリスミニ・クーパーS。1964年には、オランダのチューリップ・ラリーやアルプス山脈を越えるアルペン・ラリーのプラクティス車両として活躍する。新しいハイドロラスティック・サスペンションの、試験台にもなった。

翌年は、モナコ周辺で競うラリー・モンテカルロの1Lクラス参戦を目指し、970ccエンジンへ置換。ところが、スタート地点へ向かう途中にコンロッドが破損。棄権している。

モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)
モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

英国へ戻されると、グレートブリテン島中部、ハダーズフィールドで開かれた第10回国際警察ラリーへ向けて、1275ccエンジンへ交換される。シャシー番号K/A2S4/384848はペナルティなしで完走し、国際部門で優勝。他にも5部門で勝利した。

1966年に再びプラクティス車両へ登用された後、BMCのディーラーを営むオズワルド・ティロットソン氏へ売却。複数のオーナーによって、ラリーやヒルクライムへ参戦するが、1983年に放置状態で発見される。ボディがグリーンに塗られた状態で。

カーブへ貪欲に食らいつく姿勢が快感

クーパーSを救ったのは、ミニの専門家で、購入を決めたロバート・ヤング氏。1275ccエンジンを積んでいた、1965年仕様へ丁寧にレストアされた。2024年にもリビルドを受けており、素晴らしい状態が保たれている。

このK/A2S4/384848は、3種類のクーパーS用エンジンがすべて積まれた、唯一のワークス仕様ミニだと考えられている。8 EMOのナンバーは、当時のままだ。

モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)
モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

既に1275ccエンジンは温まっている。交通量の少ない丘陵地帯で、ラリー・ミニの本領発揮と行こう。平凡なクルマを、戦闘力の高いマシンへ生まれ変わらせる能力に長けていた、BMCのワークス部門だったが、このクーパーSは代弁者だといっていい。

カーブへ貪欲に食らいつく姿勢が、実に快感。フロントの反応は、若手コメディアンのツッコミ級に素早い。現代のモデルへ乗り慣れたドライバーは、モトリタ社製ステアリングホイールのダイレクトさに舌を巻くはず。

近年のスポーツカーを驚かせる充分な速さ

キャスター角が調整され、セルフセンタリング性の強いリムを握る手のひらへ、鮮明に情報が伝わる。無駄なく動くシャシーと、見事にシンクロしている。スキがなく、ドライバーが乗り慣れるほど速度域も高まる。

タコメーターは、殆ど見なくて大丈夫。エンジンが放つすべてから、6500rpmのシフトアップ・タイミングを理解できる。スピードは、流れる景色の勢いで大体わかる。ギア比がショートで、100km/hはトップギアで4500rpm。違反の心配は少ない。

モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)
モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

3000rpmを過ぎると、Aシリーズは本域で唸り始め、5000rpmで吠える。トルクがリニアに高まり、近年のスポーツカーを驚かせるのに充分な速さを引き出せる。シフトレバーは曖昧だが、3速と4速の間なら、丁寧に動かせば問題ない。

ヘアピンでは、ボタンを押さずにレバーを上下できる、サイドブレーキが便利。ギアはストレートカットだが、ノイズは抑えられている。ステアリングホイールが低く伸び、快適性にも配慮されている。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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