モーリス・ミニ・クーパーS(1) ワークスの熱意は想像の遥か上 荒々しいAシリーズにハイドロ・サス 

公開 : 2026.02.15 17:45

BMCのワークスマシン、クーパーS 高回転型の1071cc Aシリーズにハイドロ・サス カーブへ貪欲に食らいつく快感 悩みや不安を吹き飛ばす疾走感 UK編集部が小さなラリー・ミニを振り返る

排気量以上に荒々しい唸りのAシリーズ

角を曲がる度に、ロールケージが震える。横っ腹が、ビニール張りのバケットシートへ食い込む。まるで岩のように、小さなモーリスミニ・クーパーSは硬い。古いワークス・ラリーカーの熱意は、想像の遥か上を行く。

市街地を流せば、通行人に手を振ってもらえる。対向車は、パッシングで応援してくれる。レッドとホワイトのツートーン・ボディは、グレーな街並みで目を引くらしい。

モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)
モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

シャシー番号K/A2S4/384848のミニは、英国のRACラリーに向けて仕上げられた、初期のクーパーS。Aシリーズ・エンジンが、排気量以上に荒々しい唸りを撒き散らす。

ダッシュボードには、スミス社製メーターと一緒に、沢山のトグルスイッチ。樹脂製テープを打ち出す、懐かしいダイモテープで丁寧にラベリングされている。1万rpmまで振られたタコメーターの上にも、6500rpmがレブリミットだと貼られている。

サスペンションはハイドロラスティック

クラシックなレーシング・ミニへ乗るのは久しぶり。クラッチは、ペダルを数cm戻せば繋がる。運転姿勢は少々不自然だが、開発を率いたアレック・イシゴニス氏は、この方がドライバーの集中力を保てると考えたらしい。

ツインSUキャブレターの効果で、アクセルレスポンスは過激。舗装の穴を通過し、揺れでうっかり踏み込むと、リードを解かれた子犬のように暴れそう。旋回速度は滅法速い。ブレーキを頼るのは、横断歩道や交差点に差し掛かった時くらいだ。

モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)
モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

サスペンションは、アレックス・モールトン氏が提案したラバーコーンではなく、限定的に採用されたハイドロラスティック。跳ねるような乗り心地が抑えられ、だいぶ快適に進める。ダンパーが追加され、フラットに姿勢は制御され、操縦性も良い。

高回転型へ生まれ変わった1071ccユニット

今ではモデル名になったミニのクーパーは、もとは技術者のジョン・クーパー氏が提案した高性能仕様。反対していたイシゴニスを説得し、1961年にフォーミュラ・ジュニア仕様の997cc Aシリーズ・エンジンを搭載したのが始まりだった。

だがクーパーは、1100ccクラスへの挑戦を望んでいた。既にブロックはボアアップが難しく、モーリスのエンジン部門は、新しいAシリーズの開発へ取り組むことになる。

モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)
モーリス・ミニ・クーパーS(ワークスラリーカー/1963年式)    マックス・エドレストン(Max Edleston)

ストロークは、81.28mmから68.2mmへショート化。強化されたクランクシャフトが組まれ、ビッグバルブのシリンダーヘッドが載せられた。排気量は1071ccへ拡大され、より高回転型のエンジンへ生まれ変わった。

果たして、それを積むミニはクーパーSと呼ばれ、最高出力は15ps上昇。最高速度は152km/hに達した。K/A2S4/384848が搭載したエンジンも、当初は1071ccだった。

記事に関わった人々

  • 執筆

    サイモン・チャールズワース

    Simon Charlesworth

    英国編集部
  • 撮影

    マックス・エドレストン

    Max Edleston

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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