変わりゆくF1と素晴らしき日本を鈴鹿で実感【森口将之の『もびり亭』にようこそ 第19回】

公開 : 2026.04.08 11:45

モビリティジャーナリストの森口将之が、モビリティに関するあらゆる話題を語るこのブログ。第19回は、先日鈴鹿で開催されたF1日本グランプリについてです。

8年ぶりの観戦。観客層の変化に驚き!

鈴鹿サーキットで日本グランプリを見てきました。前回行ったのは2018年なので、8年ぶりになります。つまり僕はモータースポーツにさほど興味があるわけではないのですが、F1と言えばモータースポーツの最高峰。今の状況を見ておきたいという気持ちもあり、5年ぶりに復帰したホンダの協力もあって、観戦することができました。

といっても、レースの結果はさまざまなメディアで報じられているので、ここではちょっと違った視点で、現地で見て感じたことを書いていきます。

最終コーナーを立ち上がる2台のアストン マーティン・ホンダ。
最終コーナーを立ち上がる2台のアストン マーティン・ホンダ。    森口将之

サーキットに着いてまず驚いたのは、観客が多かったことです。公式発表によると、来場者は20年ぶりに30万人以上となり、僕が行った決勝の日曜日だけで13万人を記録したそうです。国立競技場の収容人数の2倍近くと言えば、凄さがわかるでしょうか。

しかも以前と比べると、若い人、女性、外国人の姿が目立ちました。外国人は円安の影響もあるので理解できますが、若い人や女性が多かったことは完全に想定外でした。

レース前にHRC(ホンダ・レーシング)代表取締役社長を務める渡辺康治さんとともに説明を行った、HRC-UK広報・マーケティング戦略担当の鈴木悠介さんの話を聞いて、謎が解けました。

今、F1は世界的にブームで、とりわけアメリカで人気が高まっているとのこと。その理由のひとつとして挙げたのが、F1をテーマとしたネットフリックスのドキュメンタリー番組でした。女性ファンが多くなったのもこの影響だと言っていました。

ドライバーもファンも、世代交代

レース後にネットフリックスを契約している妻に頼んで見せてもらったところ、ちょっと感動してしまいました。クルマメディアが取り上げがちなチームやメカニズムより、ドライバーやチームオーナーの人間ドラマにスポットを当てていて、ドラマタッチで紹介していたからです。

サーキットとはまったく違う時間軸でストーリーが進んでいくのが新鮮だったし、トップチームに偏らないのは好感が持てたし、人にフィーチャーしたおかげもあって、まったく違うF1を見ることができたという印象でした。

好天に恵まれたこともあり、13万人が訪れた日曜日の決勝。
好天に恵まれたこともあり、13万人が訪れた日曜日の決勝。    森口将之

ネットフリックスというと、野球のWBCを独占中継したことで不満を持った人もいるようですが、こちらもニュースによると、若年層や女性の視聴者の比率が増えたそうです。

中高年男性が中心というのは、野球ファンとクルマ趣味にある程度共通していると感じていますが、F1についてはネットフリックスがその状況を変えつつあるし、野球についてもそういう効果は見込めるのではないかと感じています。

広報の方の話を続けると、ネットフリックス経由でF1に入ってきた人たちは、メカニズムの知識は浅い代わりに、ドライバーの追っかけをする人が多いとのことです。

それが良いか悪いかはともかくとして、1990年前後のF1、アイルトン・セナが操るマクラーレン・ホンダの全盛期だった頃も、ファンの中心は当時の若者でした。

今年の鈴鹿では、メルセデスに乗る19歳のキミ・アントネッリがトップでチェッカーを受け、ポイントランキングでもトップに立ちました。

F1が続いていくうえでは、ドライバーはもちろんファンの世代交代も必須です。それを成し遂げようとしているネットフリックスの影響力に圧倒されました。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    森口将之

    Masayuki Moriguchi

    1962年生まれ。早稲田大学卒業後、自動車雑誌編集部を経てフリーランスジャーナリストとして独立。フランス車、スモールカー、SUVなどを得意とするが、ヒストリックカーから近未来の自動運転車まで幅広い分野を手がける。自動車のみならず道路、公共交通、まちづくりも積極的に取材しMaaSにも精通。著書に「パリ流環境社会への挑戦」(鹿島出版会)「MaaSで地方が変わる」(学芸出版社)など。

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