F1日本GP現地観戦で伝わってきた、ホンダの空気感【日本版編集長コラム#76】

公開 : 2026.04.05 12:05

AUTOCAR JAPAN編集長ヒライによる、『日本版編集長コラム』です。最近乗ったクルマの話、取材を通じて思ったことなどを、わりとストレートに語ります。第76回はF1日本GPを現地で観戦した話です。

新たなスター誕生を目にした瞬間

メルセデスの19歳、キミ・アントネッリの優勝に沸いたF1日本グランプリ(以下日本GP)。3月29日に鈴鹿サーキットで開催された、その決勝を現地観戦することができた。

スタートこそポールポジションから陥落するも、いいタイミングでセーフティカーが入った幸運を逃さず、そこからの逃げる速さは現地で見ていても尋常ではなかった。近くで観戦した同じメディアの方からも、「何であの子はあんなに速いの?」という声が上がったほど。

F1日本GP決勝をこのキャップで観戦。右はお土産に頂いた『プレリュー堂』カレー。
F1日本GP決勝をこのキャップで観戦。右はお土産に頂いた『プレリュー堂』カレー。    平井大介

ああいった場面で圧倒的な速さを見せるのは、これまでの多くの王者が見せてきたことで、新たなスター誕生を目にした瞬間だった。

しかしこの日私が被っていたキャップは、アストン マーティンのもの。そう、パワーユニットを今年からワークス復帰したホンダが供給しており、その取材会として鈴鹿を訪れることができたのだ。

ご存知のように、開幕から異常な振動などマシンに問題を抱え、これまで完走すらしていない。この日本GPも、フェルナンド・アロンソが21番グリッド、ランス・ストロールが22番グリッドで、観戦したグランドスタンドの座席がまさに目の前だった。

ちなみにアロンソは、ルノーF1で圧倒的な速さを見せ史上最年少年間チャンピオンを獲得した2005年、ちょうどルノーの取材をかなり深くしており、日本GPでも取材経験があるので、個人的にかなり思い入れがある。

20年以上(!)経った今も、44歳でこうして現役で頑張っている姿は、涙なしには見ることができないのであった。

「ご期待に沿えない状況。何とか挽回したい」

決勝を前に、今回この取材会に参加したメディアに向けて、HRC代表取締役社長である渡辺康治さんから、現状に関する説明があった。

まずは「ご期待に沿えない状況。何とか挽回したい」と挨拶。そして言い訳はしたくないものの、2021年にワークス参戦が終わりトップエンジニアが量産部門に散り散りとなったところで、2023年に復帰方針が経営承認。

鈴鹿サーキットのホンダ・ブース中心に今年のマシンを展示。
鈴鹿サーキットのホンダ・ブース中心に今年のマシンを展示。    平井大介

そこから呼び戻すなどして現在は主要メンバーの再配置ができているが、明らかにスタートの遅れがあったと、その苦しい胸のうちを吐露する。

そして事前のシミュレーションでは顕在化しなかった振動が、実車走行で発生。バッテリーにダメージを与えてしまい、年間使用可能な3基に対して寿命のリスクを抱えてしまった。

現在はだいぶ収まってはしているものの、まだ継続的な対策が必要な状況となっている。しかし、レギュレーションで定められた予算制限=コストキャップの関係もあり、何かと物入りなワークス復帰初年度としては、厳しい状況のようだ。

ただ、渡辺さんも「信頼性はだいぶ上がっている」と慎重な言い回しに終始しながら、前を向いている。また、いろいろと話を聞いていると、解決に向け、ホンダの技術であればブレイクスルーが可能ではないかと思わせる現場の空気感もあった。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影 / 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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