【休日クラシック・ポルシェ・アーカイブ #38】1984年ポルシェ911カレラ3.2 4×4パリ・ダカール/タイプ953(前編)「AWDでパリ・ダカール・ラリーに挑む」

公開 : 2026.09.20 09:11

アフリカのガソリンに合わせて低圧縮化

パリ・ダカール・ラリーに向けて製作された953は、911カレラ3.2をベースに、エンジンは1万2000kmという長距離のラリーを考慮し、絶対的なパワーより耐久性を優先したチューニングが施された。アフリカで入手可能なガソリンの品質が低いため、圧縮比を10.3:1から9.0:1へ下げたことにより、最高出力は225hpに低下していた。

ドライブトレインは911ターボ3.3 4×4カブリオレで開発されたAWDシステムを受け継ぎ、市販車と同じ5速トランスミッションとリアディファレンシャルの前方にセンターデフを追加。強固な太いトルクチューブによりリア/センターデフとフロントデフが結合され、プロペラシャフトはFRモデルの944から流用された。

1983年9月に911SCをベースとしたプロトタイプを用いて、北アフリカのアルジェリア南部でテストが開始された。ドライブは911SCがサファリ参戦時にプロジェクトでチーフエンジニアを務めたローランド・クスマウルが担当した。
1983年9月に911SCをベースとしたプロトタイプを用いて、北アフリカのアルジェリア南部でテストが開始された。ドライブは911SCがサファリ参戦時にプロジェクトでチーフエンジニアを務めたローランド・クスマウルが担当した。    ポルシェ

センターディファレンシャルは、前後トルク配分を31:69とし、手動でロックが可能だった。

カスタマー・スポーツ部門によって施された変更点

カスタマー・スポーツ部門によって施された変更点としては、小型オイルクーラー(リアスポイラー下部に配置)の追加、シフトレバー位置の変更(コクピット内で後方へ移動)、焼結金属コーティングを施したレーシングクラッチ、そしてケブラー複合材製のトランスミッション・シャフトの採用などが挙げられる。

953のサスペンションは、砂漠の走行に備え、911カレラのマクファーソン・ストラットに代わり、953では左右それぞれに2本のビルシュタイン製ダンパーを配した新しいダブルウィッシュボーン式を採用。

本来は水平対向6気筒エンジンをツインターボで武装し、全輪駆動(AWD)化した『959』で挑む予定だった(写真は市販モデル)。
本来は水平対向6気筒エンジンをツインターボで武装し、全輪駆動(AWD)化した『959』で挑む予定だった(写真は市販モデル)。    ポルシェ

リアには、セミトレーリングアームと片側1本のコイルオーバー・ショックアブソーバーを組み合わせた強化アクスルが採用され、最低地上高は270mmに引き上げられている。

ホイールは標準のフックス製15インチ径鍛造アルミホイールが採用され、リム幅はフロントが7インチ、リアが8インチとされた。タイヤは、ダンロップ製の専用オールテレインタイヤ(サイズ:205/70R15)が組まれた。

(当連載は、基本的に日曜日の午前9時11分に公開しています。後編は9月27日公開予定です)

記事に関わった人々

  • 執筆

    上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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