ポルシェ911 ターボS(2) T-ハイブリッドと四輪駆動が叶える格の違う速さ 長い歴史は揺るがず、確かな実力は一層の高みへ

公開 : 2026.09.03 18:10

992.2型でT-ハイブリッドを得た『ポルシェ911 ターボS』は、3.6Lフラット6と駆動用モーターで711psへ上昇。高度なシャシー技術が相乗し、実力を高めたジャイアントキラーです。UK編集部が試乗します。

実力を一層高めたジャイアントキラー

1990年代の993型や996型で、スーパーカーへ迫る性能を獲得した、ポルシェ911の「ターボ」。その頃から、格上を打ち負かすジャイアントキラーと呼ばれるようになった。T-ハイブリッドで711psを叶えた992.2のターボSは、その実力を一層高めている。

AUTOCARの計測では、0-97km/h加速が2.6秒で、0-400mダッシュは10.5秒。気温の高い日だったが、圧巻のタイムだといって良い。現代のスーパーカーの多くが、ターボとハイブリッドを獲得し、劣らぬ速さを叶えていることも事実だが。

ポルシェ911 ターボS(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 ターボS(992.2型/英国仕様)

T-ハイブリッドではない992.1型の911 ターボSから、大幅にタイムを縮めたわけでもない。それでも、直接的なライバルといえるマクラーレンアルトゥーラや、アストン マーティンヴァンテージSと比べれば、格違い的な速さにあることも間違いない。

電子制御の四輪駆動システムとローンチコントロールの効果で、トラクションは圧巻。ハイブリッドは滑らかにパワーを高め、ブーストが延々と昇圧するような感覚を生む。低域でのターボラグは皆無といえ、7400rpmのレッドラインへ豪快に上昇していく。

入力を巧みに吸収するしなやかな足回り

3.6L水平対向6気筒エンジンは、高負荷時なら期待通りの響き。低域では低くこもった音色ながら、電動ターボが奏でる「ヒュイーン」という高音は、ジェットエンジンのよう。より心を震わせるようなハーモニーなら、なお望ましい。

ちなみに、T-ハイブリッドによってスターターモーターは省かれ、気持ちを高ぶらせるクランキングは聞こえなくなった。アイドリング時から、鋭い走りを予感させるが。

ポルシェ911 ターボS(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 ターボS(992.2型/英国仕様)

911で操縦性を追求するドライバーなら、GT3へ強く惹かれるだろう。しかし、高速域での安定性やフィードバックの豊かさと引き換えに、ノイズは盛大で挙動はシャープで、乗り心地は硬い。日常性を加味すると、理想的な一択にはなりにくい。

PASMアダプティブダンパーが組まれるターボSは、うねりが続くようなアスファルトでも、しなやかに動く足回りが入力を巧みに吸収。911 GT3ならシートで上半身が揺さぶられ、ボディ底面をこするような区間でも、構えることなく疾走できる。

ダイレクトに向きを変えるフロントノーズ

この落ち着きを支える技術の1つが、シャシーをフラットに保つPDCC。カーブへ飛び込めば、印象的な敏捷さでラインを辿れるが、安定性も揺るがない。

ステアリングはGT3より軽く、手のひらへ伝わる情報量は若干薄い。精緻さや操舵時の没入感は、もう少し高められる可能性はある。だが、電子制御アンチロールバーが相乗し、90度ほど切り込めばダイレクトにフロントノーズは向きを変えていく。

ポルシェ911 ターボS(992.2型/英国仕様)
ポルシェ911 ターボS(992.2型/英国仕様)

姿勢制御は至って完璧で、そのアシストは、ドライバーが感知できないほど自然。引き換えとして、公道で許される速度域では、滑沢な挙動を楽しみにくいけれど。

アクセルオフでの旋回時に、リア寄りの重量バランスを意識することは殆どない。これは、四輪駆動の911が求めてきた特性といえ、ターボSの支持者を減らす要因にはならないだろう。ブレーキペダルの感触に、違和感も一切ない。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マット・プライヤー

    Matt Prior

    役職:編集委員
    新型車を世界で最初に試乗するジャーナリストの1人。AUTOCARの主要な特集記事のライターであり、YouTubeチャンネルのメインパーソナリティでもある。1997年よりクルマに関する執筆や講演活動を行っており、自動車専門メディアの編集者を経て2005年にAUTOCARに移籍。あらゆる時代のクルマやエンジニアリングに関心を持ち、レーシングライセンスと、故障したクラシックカーやバイクをいくつか所有している。これまで運転した中で最高のクルマは、2009年式のフォード・フィエスタ・ゼテックS。
  • 執筆

    マット・ソーンダース

    Matt Saunders

    役職:ロードテスト編集者
    AUTOCARの主任レビュアー。クルマを厳密かつ客観的に計測し、評価し、その詳細データを収集するテストチームの責任者でもある。クルマを完全に理解してこそ、批判する権利を得られると考えている。これまで運転した中で最高のクルマは、アリエル・アトム4。聞かれるたびに答えは変わるが、今のところは一番楽しかった。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

ポルシェ911 ターボSの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

Google検索で『AUTOCAR JAPAN』の記事を見つけやすくする方法