私のクルマ愛、いま難しい局面です【クロプリー英国版編集長コラム/クルマ漬けの毎日から】

公開 : 2026.09.20 17:05

前半ではテスラについて、後半では新旧の長期テストカーについて語ります。本国版AUTOCAR編集長スティーブ・クロプリーによるコラムです。

テスラ、クルマづくりを忘れないで

テスラは醜いだろうか? 最近のネット上のコメントからすると、この質問にイエスと答える人は多いだろう。

とはいえ、私はテスラが好きだ。

テスラ・モデルY
テスラ・モデルY

いまや生産終了となったモデルSを初めて見た時は、「すごくいい」と思った。低く、長く、そして優美に見えたからだ。

またモデルSよりも小型のモデル3は、いまも私のお気に入りだ。フロントエリアが小さく、ボンネットも低いモデル3は、EVのパッケージングの可能性を早期に示した。

そしてモデルYも、結構気に入っている。いまではノーズが、横長のフロントライトですっきりとしたデザインになっており、そこが特にいいと思う。

とはいえ、生産終了となったモデルXには何も思い入れはない。

モデルXのリアのガルウィングは、まるで小屋の扉のようにバタバタと開閉していたからだ。それにサイバートラックのことも、あまりいいとは思えない。あれはイーロン・マスクの気まぐれにすぎない。

しかし、私が気になっているのは、テスラが新たにロボットの製造に熱心に取り組むあまり、自動車メーカーとしての勢いを失っていることだ。

テスラはこの数年にわたり、伝統的な自動車メーカーを魚雷で撃沈するかのような勢いで、圧倒的な存在感を示してきた。だが、いまでは競争相手が追いつく余地を自ら与えてしまっている。

テストカー、リープモーターからメルセデスへ

新しい長期テストカーが私に届いた。だが、喜んでいいのかどうか、いまひとつわからない。

新たなテストカーはメルセデス・ベンツCLAエレクトリックで、すでに多くの評論家から高く評価されている。テストを開始して1週目にして早くも、同僚たちのコメントはどれも本当だったと実感している。

新たな長期テストカー『メルセデス・ベンツCLAエレクトリック』がクロプリー編集長のもとへ到着。
新たな長期テストカー『メルセデス・ベンツCLAエレクトリック』がクロプリー編集長のもとへ到着。

滑らかで、洗練されており、ラグジュアリーで、エネルギー効率にも優れ、またハンドリングも素晴らしい。

しかもこうした点は、CLAエレクトリックの長所のほんの一部にすぎない。

しかし、こうして原稿を書いているいまも、つい数日前まで長期テストしていたリープモーターC10(レンジエクステンダー付)は、まだ私の家の敷地内に置かれている。

C10のことも私は気に入っていて、この5か月間楽しんできた。9000mile(約1万4500km)走行した何の罪もない良き相棒に、さっさと別れを告げて次のテストカーへ移っていくのは、何となく失礼な気がするのだ。

この5か月間長期テストしていた『リープモーターC10』とは、いよいよお別れ。
この5か月間長期テストしていた『リープモーターC10』とは、いよいよお別れ。

「それは馬鹿げている」と特別クルマに興味のない人たちは言うだろう。

クルマはモノなのだから、と。自分のクルマに名前をつける人もいるかもしれないが、クルマは所詮機械にすぎない。

だが、私はどうしてもそんなふうに考えることができないのだ。

名前をつけたりはしないが、クルマにはそれぞれ個性があると思う。魂さえも宿っているように思える。冷蔵庫やマットレス、コーヒーメーカーなどとは異なり、特別な情熱や思い入れを持ってクルマを見てしまう。

このことが最近まで私の長期テストカーだったクルマと別れ、次へと移ることをつらい気持ちにさせている。

たとえ新たなテストカーが極めて優秀だと即座に体感したとしても。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    小島薫

    Kaoru Kojima

    ドイツ自動車メーカーの日本法人に在籍し、オーナーズマニュアルの制作を担当。その後フリーランスで翻訳をはじめる。クルマはハッチバックを10台以上乗り継ぎ、現在はクーペを楽しんでいる。趣味はピアノ。

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