アウディS5

公開 : 2016.12.02 05:40  更新 : 2017.05.29 18:13

■どんな感じ?

速い、しかし凶暴とまではいかない。ハンドリングは精確だが、ひたすら安定志向。朗々たるサウンドは穏やかで、剥き出しのノイズとは程遠い。ちょっぴりエキサイティングだけど、散漫な運転でも危険な目に遭うことはない。S5とは、そんなクルマだ。

それでも、インテリアは走り志向に設えられている。基本的なデザインこそA5のそれだが、ドライビングポジションはS5独自でやや低い。色遣いなどに派手さはないが、素材のクオリティは目を見張るものがある。

ドライバーズ・シートは、巨漢のテスターにはやや窮屈だったが、表皮はソフトで、サポート性に優れ快適。後席のスペースは評価に値するが、それでも大人ふたりが長時間乗り続けるのであれば、メルセデスCクラス・クーペの方が快適だろう。

ちなみに後席居住性は、今後登場するスポーツバックであっても、この2ドア・クーペからの大幅な改善は期待できそうにない。

走り始めると、V6ユニットは明瞭かつ心地よいサウンドで自己主張するが、それも速度を上げるに連れ、周囲の音に紛れ込んでしまう。

そうなると、その雄叫びを耳にするのは、唯一シフトダウンでレヴ・カウンターの針が跳ね上がるときだけ。これよりパフォーマンスで下回っても、より勇ましいエンジン音を轟かせるクルマは少なくない。

スロットルのレスポンスも穏やかだが、これは意図的な味付けではなく、ターボユニットとトルコンATの組み合わせに起因する特性だろう。

ただし、遅れを感じるのはほんの短い間だけ。先代のスーパーチャージャーV6よりトルクの立ち上がりは早く、すぐにゼロから一気にピークを目指すようなフィールを感じられる。

それでも飽き足りず、エンジン全開の領域を思う存分味わいたいなら、8速ATをSレンジに入れるか、マニュアル変速にすればいい。

こうすれば、スロットル・ペダルの踏み込みに即応してダウンシフトする、最新のハイ・パフォーマンスカーの自動ギヤボックスに多いパターンで変速できる。

一方、3速固定で走ってみれば、エンジンが低速から力を振り絞ろうとするのを感じ取れるだろう。回転計の針は、急激ではないものの遅滞なく高回転域へと駆け上がっていく。

息つきを見せるのは、残り1000rpmほどに差し掛かったときだけ。速度域の低い街乗りなどであれば、忙しない変速は必要ない。

エンジンは先代より改良されており、トランスミッションは8速トルコンATを新規採用した。しかしその協調は、常に最高レベルにあるわけではない。

走り至上主義の硬派なドライバーがジャッジすれば、メルセデスAMGの新型3.0V6ターボや、BMWの実績豊富な3.0直6が、僅差ながらも勝利するだろう。

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