【現役デザイナーの眼:スズキ・ジムニーノマド】全体から伝わる本格SUVらしい機能美 ブランドイメージを築く重要な役目

公開 : 2026.08.18 11:45

現役プロダクトデザイナーの渕野健太郎によるデザイン分析。今回取り上げるのは『スズキ・ジムニー・ノマド』です。全体から伝わる本格SUVらしい機能美は、ブランドイメージを築く上で重要な役割を担います。

最大の魅力は高いアイコン性

今回取り上げる『スズキジムニー・ノマド』は、本格クロスカントリー軽自動車『ジムニー』の5ドア版として登場しました。拡幅版の『ジムニー・シエラ』をベースにホイールベースを延長し、実用性が大きく向上。これまでジムニーを選べなかったユーザーにも魅力的な選択肢となりました。

しかし、5ドア化で最も重要なのは、見た目でジムニーらしさを失わないことです。その点ノマドは上手くデザインし、難しい課題を見事にクリアした1台と言えるでしょう。

原点回帰し、機能に徹したデザインが逆に感度の高い方からも人気に。それは明快さによる高いアイコン性が、唯一無二の個性を引き出しているからでしょう。
原点回帰し、機能に徹したデザインが逆に感度の高い方からも人気に。それは明快さによる高いアイコン性が、唯一無二の個性を引き出しているからでしょう。    スズキ

ベースとなった現行4代目ジムニーは、2018年の発売なので既に8年が経っています。しかし、タイムレスなデザインのおかげで古さをまったく感じさせません。

旧型の3代目もモダンで完成度の高いデザインでしたが、4代目は一転して原点回帰。アウトドアブームも追い風となり、従来のジムニー・ファンやクロカン好きだけでなく、街乗りを中心とするライトユーザーからも高い支持を集めました。

軽自動車でありながら200mmを超える最低地上高、大径タイヤを履くラダーフレーム車ならではのプロポーション、そして四隅を角張らせたスクエアなボディ。この明快さは唯一無二のアイコン性があり、そこがジムニーのデザイン最大の魅力だと思います。

5ドア化でも崩れない力強いスタンス

ジムニー・ノマドは、拡幅版であるシエラをベースに、ホイールベースを340mm延長して2590mmにし、全長を3890mmまで伸ばして5ドア化されました。サイドビューはひと目で伸びやかな印象になりましたが、絶妙なバランスにまとめられており、間延びした印象はありません。

現行ジムニーは歴代モデルよりもキャビンの上下幅が薄く感じられるプロポーションになっていますが、そのおかげで全長が伸びても違和感がなく、力強いイメージをしっかりと受け継いでいます。

5ドア化による間延びを、ギリギリ感じさせないとこを狙ったデザイン。ホイールベースが長くなった事で安定感が増し、ベース車とは違った魅力があります。
5ドア化による間延びを、ギリギリ感じさせないとこを狙ったデザイン。ホイールベースが長くなった事で安定感が増し、ベース車とは違った魅力があります。    スズキ

むしろ5ドア化によって、堂々としたフォルムへとさらに進化したようにも見えます。ホイールベースが延びたことでリアオーバーハングがやや寸詰まりに見える印象もありますが、本格SUVらしい機能美がデザイン全体から伝わってきます。

その力強さをさらに引き立てているのが、シエラ同様に張り出したオーバーフェンダーと大型タイヤです。ジムニーに対し全幅170mm(片側85mmも!)拡大されたワイドなボディは、どっしりとした安定感。

軽自動車由来のコンパクトなボディに対し、ワイドトレッドを組み合わせたこのプロポーションは、全長が延びたことを感じさせず力強いスタンスを実現しています。

フロントはジムニー伝統の丸型ヘッドランプを継承しつつ、グリルのみ専用デザインを採用しています。開口部にメッキ加飾を施たガンメタリックのグリルは、上質感を演出。機能性を重視した標準仕様のシンプルなデザインを好む人もいるでしょうが、このような派生モデルでは差別化も重要な役割です。

ノマドはジムニーらしい無骨さや機能性を損なうことなく、程よい上級感を加えることに成功したデザインだと感じました。

記事に関わった人々

  • 執筆

    渕野健太郎

    Kentaro Fuchino

    プロダクトデザイナー兼カーデザインジャーナリスト。福岡県出身。日本大学芸術学部卒業後、富士重工業株式会社(現、株式会社SUBARU)にカーデザイナーとして入社。約20年の間に様々な車をデザインする中で、車と社会との関わりをより意識するようになる。主観的になりがちなカーデザインを分かりやすく解説、時には問題定義、さらにはデザイン提案まで行うマルチプレイヤーを目指している。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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