コスワースの血統 まさに生え抜きのレーシングカー、シエラRS500コスワース

公開 : 2017.04.08 00:00  更新 : 2017.05.29 18:53

ワイルドな姿が何とも魅力的なフォード・シエラRS500コスワースが誕生して30年になります。それを祝して、ジェームズ・ペイジが公道仕様とグループA仕様という2台のシエラRS500コスワースのステアリングを握ってみました。(姉妹サイト、CLASSIC & SPORTSCARより転載)

DFVユニットの成功を受けて選ばれたコスワース

フォード・シエラ・コスワースを語るにあたって繊細という言葉は無用だ。パワー・デリバリーは荒々しく、外見もエレガンスとはほど遠い。このクルマの成功は、フォードの欧州モータースポーツ部門のスチュアート・ターナーによるものであり、ウォルター・ヘイズのすすめでサポートを買ってでた親会社のお陰でもある。ブルー・オーバルとの密接な協力関係を考えれば、DFV F1エンジンの成功を受けて、コスワースがパートナーに選ばれたのも当然のことだった。

グループA仕様のむき出しのインテリア。


そもそも標準仕様のシエラは、1982年に発表された際、あまり大きな関心を呼ばず、モータースポーツへ参戦し商品力を高めることになった。そこでコスワースは、グループAツーリングカー・レースに目標を定め、北米向けモデルであるピントのブロックをベース・エンジンに採用し、ツインカム・ヘッドとギャレットのT3ターボチャージャーを組み合わせたのだ。ターボは0.65barの過給圧をかけ、エンジンから206psのパワーを引き出す。

わずか1994ccのターボチャージド直4エンジン。レース仕様は506psを叩き出す。「文句の付けようのないクルマ」とソパー。


240km/hまで加速するにはこの装備で十分な筈だが、その外観までも一度見たら忘れられないほど強力になっていた。3ドアのボディ・シェルに新たに付け加えられた無数のパーツ類は、ローター・ピンスキーの発案によるもので、ホイールアーチのエクステンションやダクト、エア・インレットに加えて、コスワースの目印でもある巨大なリア・スポイラーが取り付けられたのだ。

公道仕様のインテリア。小ぶりな3本スポーク・ステアリングとレカロのシートが、灰色一色のインテリアのせめてもの救い。


無骨とも表現できるこのモデルは1985年のジュネーブ・モーターショーで発表されたが、実際に納車されたのはその翌年になってからだ。グループAのホモロゲーションを受けるには、最低5,000台のコスワースを生産しなければならない。しかし、500台の公道仕様が生産されていれば、そのエボリューション・モデルの出場が認められるというレギュレーションをフォードは利用したのである。

公道仕様のエンジンは標準のコスワースよりわずかにパワーアップしただけだが、チューニングの余地は遙かに大きい。

公道仕様は227psだが、レース仕様は506ps

こうして誕生したRS500は、エンジンの排気量は変わらないものの、強化されたブロックと、改良型ピストンが採用され、容量をアップした吸気系とインタークーラーや、ギャレットのT31/T04ターボが取り付けられた。公道仕様の出力はそうはいっても227psであったが、重要なのはこのエンジンがレース用スペックに改良できることだった。ECUを交換すれば補助用のフューエル・レールとインジェクターを使うことができ、ウエスト・ゲートの設定と燃料の供給方法に手を加えれば、レース仕様の出力を506psまで強化できるのだ。

ホモロゲーションに必要な公道仕様のRS500は、ティックフォード社によってわずか16日で製造された。今回試乗したポール・リンフットが所有する車両は、数多いブラックではなく、ホワイトまたはブルーに塗装された少数派の1台である。彼はこの個体を一度手放したが、その後、買い戻している。その際に完全なレストレーションを行ったため、今のコンディションは最高だ。

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