ヒロインはFRシャシー フェラーリ・アマルフィ(2) 極上に魅力的な二面性 強いていうなら?

公開 : 2025.12.23 18:10

ローマの改良版、アマルフィ 驚異的な反応のV8は640psへ 12チリンドリへ雰囲気を寄せた容姿 手元へ物理スイッチ復活 快適クルーザーでも期待通りのドラマチックさ UK編集部が試乗

驚異的な反応 線形的なパワーデリバリー

フェラーリではエントリーモデルとなる、最新のアマルフィ。復活したレッドのエンジン・スタートボタンを押すと、刺激的な重低音とともに3.9L V8ツインターボがお目覚めする。変わらず、出色のユニットであることは間違いない。

7600rpmのレッドラインへ一気呵成に上昇し、反応は驚異的。線形的なパワー展開で、有能なシャシーの実力を存分に引き出せる。電動化技術なしなのだから、恐れ入る。

フェラーリ・アマルフィ(欧州仕様)
フェラーリ・アマルフィ(欧州仕様)

ただし、壮大な音響体験は5000rpmから。フラットプレーン・クランクの特性上、低域では4気筒エンジンが2基同時に動いているような、少し鈍い音が放たれる。4000rpm前後では、チェーンのような金属音も目立つ。それ以上回せば良いのだけれど。

デュアルクラッチ8速ATは、レシオがロングながら、迅速にギアを切り替える。ブレーキはバイワイヤ方式で、過敏な反応は抑えられている。強く踏み込んだ時の、制動力の増し具合は若干鈍いかもしれない。

快適なクルーザー 期待通りのドラマチックさ

アマルフィ最大の魅力といえるのが、シャシー。真っ先に驚かされるのは、秀抜な安定性。パワフルなエンジンにシャープなステアリングで構えたFRのフェラーリは、ウェット・モードやコンフォート・モード時には、極めて快適なクルーザーになる。

高速道路の速度域でのロードノイズは控えめで、乗り心地は目からウロコなほど優しい。大小を問わず路面の不整を、高級サルーン水準の処理能力でなだめてくれる。お高い磁性流体ダンパーのなせる技だろう。快適なシートも、貢献している。

フェラーリ・アマルフィ(欧州仕様)
フェラーリ・アマルフィ(欧州仕様)

開けた丘陵地帯の道では、期待通りのドラマチックな運転体験へ興じれる。クイックでフィーリング豊かなステアリングに、巧みにフラットさを保ちつつ、荷重移動を感じ取りやすい姿勢制御、出色のグリップバランスが、桁違いの喜びを生む。

ステアリングの反応は、フェラーリ12チリンドリほど積極的ではない。スポーツ・モード時は、リアタイヤの僅かなスライドが許され、水を得た魚。レース・モードでは更に自由度が増す。高度な識者によるチューニングを物語るように。

実情へ賢明に設定された運転支援システム

最新モデルとして、アマルフィも運転支援システムを実装。車線維持支援に制限速度警告、ドライバー監視など、一連の機能が標準となる。

だが、実情に則して賢明に設定され、ステアリングホイールには不必要な項目を任意にオフにできるボタンが並ぶ。さらに、過剰に反応することもない。

フェラーリ・アマルフィ(欧州仕様)
フェラーリ・アマルフィ(欧州仕様)

アマルフィの英国価格は、20万2459ポンド(約4130万円)から。高音質なブルメスター社製オーディオに助手席側モニターなど、オプションは数日悩めるほど充実し、装備された内容は車載プレートへ一覧で記載される。

ガソリンタンクは80L。燃費は8.9km/Lが主張され、1日に運転したい距離は問題なく賄えるはず。本能のままに右足を倒せば、あっという間に減るはずだが。

記事に関わった人々

  • 執筆

    イリヤ・バプラート

    Illya Verpraet

    役職:ロードテスター
    ベルギー出身。AUTOCARのロードテスターとして、小型車からスーパーカーまであらゆるクルマを運転し、レビューや比較テストを執筆する。いつも巻尺を振り回し、徹底的な調査を行う。クルマの真価を見極め、他人が見逃すような欠点を見つけることも得意だ。自動車業界関連の出版物の編集経験を経て、2021年に AUTOCAR に移籍。これまで運転した中で最高のクルマは、つい最近までトヨタGR86だったが、今はE28世代のBMW M5に惚れている。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

フェラーリ・アマルフィの前後関係

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