比較試乗 新型アストン マーティン・ヴァンテージ vs ポルシェ911カレラGTS vs マクラーレン540C

公開 : 2018.06.17 10:10  更新 : 2018.06.17 12:36


優れているが繊細さで劣るヴァンテージ

一方でヴァンテージは、適度にスーパーな特別感が凝縮している。しかも、従来モデルのようなゆったりとしたGTでは滿足できないと考え、より本気度の高いドライバーズカーとしてシャシーのセッティングも見直されている。ドライビングモードのダイヤルをスポーツモードにすれば、サスペンションとパワートレインの性格が変化するが、わたしにとっては、スポーツ+モードの方がベスト。ボディコントロールが一層締まり、ステアリングの正確性と手応えにもさらに磨きがかかる。

滑らかな路面なら、コーナリングでのバランスと身のこなしも秀逸だが、車体の重さが玉に瑕。高速コーナーでは、パワーボートの船外機が船体を推し進めるように、フロントの重量物をリアタイヤが押し出すような印象があり、あまり満足のいくフィーリングではない。また、幅員の狭い荒れた路面の道も、得意分野とはいえなさそう。

まず、スポーツ+モードでは横方向の剛性が強すぎ、片輪のみに衝撃が加わると、リアタイヤが少し暴れる挙動があることと、一番小ぶりなアストン マーティンとはいえ、ボデイは依然として大きく、見切りもあまり良くないのだ。加えて、路面との当たりが硬いシャシー設定なのだが、グリップレベルの状況を明確に伝えられないことも、その理由といえる。

ヴァンテージに搭載されるアクティブ・リア・ディファレンシャルは、低速域ではかなりラフな身のこなしも受け付けるから、T字路や空いたロータリー交差点でなら、フーリガンよろしく、荒々しく楽しむこともできるだろう。しかし、スポーツカーらしい繊細さに代わるものではない。

この繊細なフィーリングというのは、現代のスポーツカーでは非常に珍しいものだと思う。それを身につけるか否かは、どこを妥協するかにかかってくる。必要充分なパワーとグリップ、車重、ボディサイズ、ボディコントロールとハンドリング・レスポンス。どれかが欠けても成り立たない。

そして今回の勝者は、それをバランスよく兼ね備えている。

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