アストン マーティン V12ヴァンキッシュ UK版中古車ガイド(2) エンジンは堅牢 定期的な走行がカギ

公開 : 2025.02.08 17:46

速さと実用性を兼ね備えた新世代アストン、初代ヴァンキッシュ 歴代で最高の操縦性 V12エンジンは堅牢 定期的な走行がカギ 錆びがちなサブフレームに複雑なセミAT 英編集部が長短を振り返る

5.0L V12エンジンは堅牢 定期的な走行がカギ

アストン マーティン V12ヴァンキッシュは、複雑な技術が導入されたモダンクラシック。定期的に走行することで、状態を保てる。保管しているだけでは、コネクターの接点などが劣化し不調になりがち。

5.0L V型12気筒エンジンは堅牢。正しいメンテナンスを継続して受けているなら、走行距離が長くても恐れる必要はないだろう。仮に問題が生じても、早期に対応すれば軽い負担で復調できることが多い。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

一般的な不具合としては、各センサーへのエンジンオイル漏れや、劣化したアイドラーからの異音、ウォーター・マニホールドとサーモスタット・ハウジングパイプからのクーラント漏れなど。理解のあるガレージを頼りたい。

セミATは、V12ヴァンキッシュの悩みのタネの1つ。トランスミッションとパワーステアリングは、定期的なメンテナンス・メニューには含まれていないものの、フルード交換で好状態を維持できる。

アストン マーティンのヘリテージモデルを扱うディーラー、アストン マーティン・ワークス社も弱点だと認識しており、100台ほどがMTへコンバージョンされている。ただし、これはかなり高額だ。

エア・アクチュエータをアップグレードし、リビルドする方が安価で済む。それでも、英国では5000ポンド(約98万円)以上を要するため、不調は予防したいところ。

アルミとスチールの腐食が弱点

アルミニウムとスチールは、接点部分が電気的な反応で腐食を起こす。V12ヴァンキッシュでは、スチール製サブフレームだけでなく、固定ポイントやアンダートレイ、ホイールアーチ・ライナーなども傷みがち。

特にフロント・サブフレームが弱点。リア・サブフレームとアンチロールバーも、アルミニウム製シェルの固定ポイントと同様に、腐食しやすいことが知られている。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

フロント・サブフレームの交換には、英国では2000ポンド(約39万円)前後が必要。付随して他の対策も必要になることが多く、それ以上の出費は覚悟したい。接触部分をステンレス製へ置換したり、新しいアルミニウムの接着などで予防もできる。

ブレーキは、公道を走らせている限り充分に効く。しかし、サーキット走行や積極的なアルプス山脈越えでは、キャパシティが追いつかなくなる。ディスクの変形や表面の摩耗で、異常振動が生じることがある。

ヴァンキッシュ Sではブレーキが強化され、耐性は上がった。それでも、激しく減速を続けると耐えきれない。APレーシング社製へのアップグレードが、定番のようだ。

走行中にサスペンションから異音が聞こえる場合は、ブッシュやマウント、ショックアブソーバーの劣化が考えられる。車重は軽くなく、強い負荷がかかり続けている。交換は想定の範囲内だろう。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

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