当時の世界最高GT アストン マーティン V12ヴァンキッシュ UK版中古車ガイド(1) MT換装も多し

公開 : 2025.02.08 17:45

速さと実用性を兼ね備えた新世代アストン、初代ヴァンキッシュ 歴代で最高の操縦性V12エンジンは堅牢 定期的な走行がカギ 錆びがちなサブフレームに複雑なセミAT 英編集部が長短を振り返る

歴代のアストンで最高の操縦性を実現

当時の欧州フォードから移籍した、ウォルター・ヘイズ氏が進めたアストン マーティンDB7は成功。その後を継いだウルリッヒ・ベズ氏は、最先端の技術力を披露することがブランドにとって重要だと考えた。

それを体現したモデルが、2001年に発売された初代V12ヴァンキッシュ。カーボンファイバーとアルミニウムを適材適所で用いた基礎骨格を、アルミ製ボディでカバー。サスペンションのウイッシュボーンにも、軽量なアルミが用いられている。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

エンジンは、当時のヴァンテージに採用されていたV型12気筒をアップデート。トレメック社製の6速セミATと、リミテッドスリップ・デフを組み合わせ、世界トップクラスのグランドツアラーが完成していた。

「歴代最高の操縦性を実現したアストン マーティンでしょう」。初試乗したAUTOCARは、その仕上がりへ熱くなった。「意欲的でありながら優雅。コンパクトでありつつ迫力は圧倒的です」。イアン・カラム氏が手がけたスタイリングも絶賛している。

1878kgと軽くない車重で、動的能力に制限はあったものの、乗り心地も素晴らしかった。ボディシェルは強固で、優れた操縦性も実現していた。

ただし、ジャガー由来だとわかるセンターコンソールに、多少の批判は向けられた。リアシートには、大人が座ることは難しかった。長距離のクルージングを得意としたが、少し気張ると5.0L V12の燃費は著しく悪化した。

サブフレームは錆びがち セミATは複雑

2004年に、V12ヴァンキッシュ Sが登場。新しいインジェクターがエンジンへ与えられ、ECUとシリンダーヘッドはアップデート。鍛造コンロッドが組み込まれ、466psから527psへパワーアップが図られた。

同時にサスペンションは引き締められ、車高は5mmダウン。トランスミッションのギア比はショートになり、フロントブレーキも増強され、運動能力を高めている。インテリアには、専用のスイッチ類などを採用。ジャガーとの一層の差別化も進められた。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)
アストン マーティン V12ヴァンキッシュ(2001〜2007年/英国仕様)    ジェームズ・マン(James Mann)

そんなアストン マーティンのグランドツアラーは、今ならまだ高騰前。モダンクラシックとして、今後の価値上昇は想定できる。

試乗して、走りに落ち着きが乏しいと感じられる場合は、サスペンション・ブッシュやショックアブソーバーの交換を検討したい。車重が影響し、劣化しやすい。ECUは既に新品での入手はできないため、故障時はリビルドすることになる。

錆びがちなサブフレームや、複雑なセミATなど、V12ヴァンキッシュの維持には相当の手間とコストが掛かる。しかし、英国には献身的な専門ガレージが存在する。どんな問題が発生しても、優れた費用対効果で対策を提案してくれるはず。

記事に関わった人々

  • 執筆

    マルコム・マッケイ

    Malcolm Mckay

    英国編集部ライター
  • 撮影

    ジェームズ・マン

    James Mann

    英国編集部フォトグラファー
  • 翻訳

    中嶋健治

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

アストン マーティン V12ヴァンキッシュ UK版中古車ガイドの前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事

 

おすすめ

人気記事