ロードテスト BMW X5 ★★★★★★★★☆☆

公開 : 2019.01.27 12:10  更新 : 2019.01.31 06:05

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★★★☆

40iや4ターボの50dに対し、30dはエントリーモデルという位置付け。それだけに、パフォーマンスは控え目だろうと決めつけるのは、ちょっとばかり早計だ。

この手のクルマにローンチコントロールを装備するなど馬鹿げた話のようにも思えるが、それでも2279kgの下位グレードであるディーゼルのSUVが0-97km/hを6.6秒で駆け抜ける韋駄天ぶりを見せるのは、そのデバイスのおかげだ。このタイムはフォルクスワーゲン・ゴルフGTIと同等で、昨年テストしたアウディQ8 50TDIより0.3秒速い。BMWは6気筒ディーゼルモデルでも、ありふれたスペックでは満足しないというわけだ。

加速はスムースで、力強くもシームレス。ブレーキペダルを開放した出足のトルクのサージは、潮の満ち干のように周期的なフィールで、このX5に説得力を欠くことのない前進をもたらす。その説得力は、回転が高まるにつれやや弱まってくるが、せいぜいこのクルマがディーゼル車だと思い出させる程度のことだ。一方で、当初はガラガラいう低音ノイズがキャビンを満たしているが、それはよりディーゼルらしいエンジン音へと変化していく。

48-113km/h加速では、その差はごくわずかながら、アウディQ8を凌ぐ。われわれが現実的な走行状況におけるパフォーマンスを図る際の指針としているこの数字、Q8では6.7秒だったが、X5は6.6秒だった。ただし、4速固定で同様の加速をした場合には、インゴルシュタットが一矢報いる。6.8秒というタイムは、X5のそれを0.5秒リードするのだ。

8段のZF製ATは、ひたすらスムース。急加速をかけなければキックダウンはプログレッシブで、シフトチェンジもシルキーで滑らかだ。スポーツモードを選択すれば、変速はだいぶ早く、幾分か力強いものになる。レブリミットでも勝手にシフトアップしない適切なマニュアルモードの存在は、このX5がドライバーズカー志向であることを示すものだ。

騒音計が示した洗練性もまた、X5の強みだといえる。113km/h巡航時のキャビンで計測したノイズは64dB、4速フルスロットル時の最大値は71dB。アウディQ8の113km/h巡航時は67dBで、X5の優れた静粛性をさらに引き上げようというBMWの狙いは、みごとに成功したことが証明された。このクラスでは最高峰の静けさで乗員を包んでくれるクルマの一台に数えられる。

テストコース

ミルブルックのヒルルートに散在する無数の高速コーナーを駆け抜けると、X5の豊かなグリップは諸刃の剣に思える。ガッチリと路面を捉えて安定そのものの走りだと感じさせる一方、グリップ限界に近づいても粘り強いことが、このクルマの重さを強調するようにも思えるのだ。その重さがサスペンションのダンピング性能や、タイヤのサイドウォールのたわみ方を試しているように感じられるのである。そして、ハンドリングの正確さも安定感も、その領域では保たれない。

30dのトルク溢れるエンジンは、頻繁なシフトアップにもきっちり追従し、ほぼどのギアを選んでも十分以上の推進力を発揮してくれる。

T1での素早い方向転換では、このX5の前後の荷重移動をもっとも感じられる。

T2の鋭いカーブは、通常ならアンダーステアを引き起こすが、このクルマはしっかりグリップして前へ進んでくれる。

T6へ向かう上り勾配も、63.2kgmものトルクの前では敵ではなく、余裕綽々で駆け抜ける。

発進加速

テストトラック条件:湿潤路面/気温9℃
0-402m発進加速:15.1秒(到達速度:146.8km/h)
0-1000m発進加速:27.9秒(到達速度:185.4km/h)

アウディQ8 50TDI Sライン(2018年)
テストトラック条件:乾燥路面/気温22℃
0-402m発進加速:15.4秒(到達速度:147.1km/h)
0-1000m発進加速:28.2秒(到達速度:186.4km/h)

制動距離

テスト条件:湿潤路面/気温9℃
97-0km/h制動時間:3.36秒

アウディQ8 50TDI Sライン(2018年)
テスト条件:乾燥路面/気温22℃

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