【連載:清水草一の自動車ラスト・ロマン】#32 月々1万円以下でフェラーリが買えた!

公開 : 2026.04.17 12:05

自動車はロマンだ! モータージャーナリストであり大乗フェラーリ教開祖の顔を持つ清水草一が『最後の自動車ロマン』をテーマに執筆する、隔週金曜日掲載の連載です。第32回は『月々1万円以下でフェラーリが買えた!』を語ります。

買って約1年後、立体駐車場に潰されて廃車!

17年前、年収300万円で支払総額640万円のフェラーリ348スパイダー(もちろん中古)を購入した、肉まん君こと酒井さん(当時26歳)。そんな彼も43歳になっていた。この17年間、いろいろなことがあっただろう。とりあえず、あの黄色い348スパイダーはどうなったのか。

酒井さん「あの348は、買って1年後くらいに、立体駐車場に潰されて廃車になりました」

前回ご紹介した肉まん君こと酒井さん(当時26歳)。今回はその後日談となる。
前回ご紹介した肉まん君こと酒井さん(当時26歳)。今回はその後日談となる。    フォッケウルフ

オレ「ええーーーーーっ!」

酒井さん「最低地上高が低すぎてセンサーが反応しなかったとかで、メキメキメキッって」

オレ「そ、それは弁償してくれたの!?」

酒井さん「してくれました。駐車場の係の人、手が震えてました」

なんと、あの伝説の年収300万円のフェラーリ・オーナーは、わずか1年ほどの命だった!

酒井さん「でも僕としては、フェラーリを買った時点ですごく満たされていたので、実はそんなにショックじゃなかったんです」

そう言えば酒井さんは、あれだけ思い詰めて買ったフェラーリを、あまり乗っていないと語っていた。フェラーリは、買うだけでお腹一杯になれるクルマゆえである。

その後あっさり12気筒フェラーリに!

オレ「で、その後のカーライフは?」

酒井「直後に中古のBMW M3を買いましたけど、すぐ飽きちゃって、続けてブルーの(フェラーリ)550マラネロに乗り換えました」

17年前に酒井さんが購入したフェラーリ348スパイダー(もちろん中古)。当時の支払総額は640万円だった。
17年前に酒井さんが購入したフェラーリ348スパイダー(もちろん中古)。当時の支払総額は640万円だった。    フォッケウルフ

なんとーーーーーっ! 年収300万円のフェラーリ・オーナーは、その後あっさり12気筒フェラーリに到達していた!

オレ「それはいくら?」

酒井さん「総額600万円でした。348スパイダーより安かったです」

ま、そうだろうなぁ。当時、550マラネロは超不人気。個人的にもまったく好きじゃない。純粋なる大乗フェラーリ教的には、邪道感満点のフェラーリである。

オレ「550マラネロに手を出してる時点で、世の中ナメてない?」

酒井さん「そうかもしれません(笑)」

一途だった青年は、夢のフェラーリを手に入れたことで世慣れし、余裕のクルマ転がしに走った、と言えなくもない。

その後結婚して第一子が誕生したため、550マラネロも売却。さらに1年半後、もう一度348のtsを購入するも、そっちは底値の総額300万円! リーマンショックに東日本大震災が追い打ちをかけ、もともと不人気だった348の相場は、奈落の底まで落ちていた。

フェラーリが月1万円以下で買えた!

酒井さん「月々の支払いは、確か9800円くらいでした」

オレ「げえっ! フェラーリが月1万円以下で買えたんだ!」

酒井さんは3台のフェラーリを乗り継いだ後、クルマ自体を卒業していた!
酒井さんは3台のフェラーリを乗り継いだ後、クルマ自体を卒業していた!    フォッケウルフ

酒井さん「その348も、1年くらいで手放しちゃいましたけど」

オレ「その後は?」

酒井さん「実は、それ以来クルマを持ってません。もう13年になります」

なんとーーーーーっ! 年収300万円のフェラーリ・オーナーは、3台のフェラーリを乗り継いだ後、クルマを卒業していたーーーーーーーーっ!!

オレ「クルマに飽きちゃったの?」

酒井さん「飽きたわけじゃないんですけど、なくてもよくなったと言いますか……」

そうなのか。

大乗フェラーリ教の教義は、「フェラーリを買えばシアワセになれる」。フェラーリに恋い焦がれた庶民は、無理してフェラーリを買えば、必ずシアワセになれた。なにしろこの世の頂点が手に入るのだ。その満足感たるや天を衝く。

しかも、あまり値段が下がらないので、手放してもほとんど損はない。ここ10年はむしろ値上がりしており、手放せば大抵儲かってしまう。世の中にうまい話はないと言うが、フェラーリは別だ。ありえないほどうまい話だったのである。

記事に関わった人々

  • 執筆 / 撮影

    清水草一

    Souichi Shimizu

    1962年生まれ。慶応義塾大学卒業後、集英社で編集者して活躍した後、フリーランスのモータージャーナリストに。フェラーリの魅力を広めるべく『大乗フェラーリ教開祖』としても活動し、中古フェラーリを10台以上乗り継いでいる。多くの輸入中古車も乗り継ぎ、現在はプジョー508を所有する。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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