ロードテスト ジープ・コンパス ★★★★★★☆☆☆☆

公開 : 2019.03.31 09:50

 

はじめに ▶ 意匠と技術 ▶ 内装 ▶ 使い勝手 ▶ 乗り味 ▶ 購入と維持 ▶ スペック ▶ 結論

走り ★★★★★★★☆☆☆

コンパスが積む2.0ℓのマルチジェットⅡディーゼルは、FCAが10年も使い続けているエンジンだ。とくにコールドスタート時や低速からの急加速時には、音や感覚がどこを取ってもその古さを感じさせる。

負荷がかかると気難しさを見せ、スロットル操作へのレスポンスはしばしばソフトに感じられるが、エンジンのトルクそのものや、実際にクルマを走らせるパワーに不足はない。今回のテストでは、中回転域重視の景気いいパワーデリバリーがはっきりと見て取れた。急発進するには回転を上げる必要があるものの、ベストな加速を維持するなら4000rpm以下でのシフトアップが求められる。イマドキのディーゼルは、これよりフレキシブルな特性の持ち主だ。

それでも、スイートスポットに入ったときのコンパスは、かなりがんばってくれる。たとえば、低回転トルクの豊かさは、オフロード走行やトレーラーなどの牽引時に威勢のよさを発揮できるだけのものがある。12.1秒という4速での48〜113km/h加速タイムを競合車たちのそれと比較すれば、われわれの見解を裏付ける実証が見出せるはずだ。2016年に計測したスコダ・コディアック2.0TDI 150は、これより1秒以上遅かった。

また、そのディーゼルユニットが粗いとはいえ、48km/hでも113km/hでも巡航時の騒音はスコダより1dB高いだけ。いうなれば、パートスロットルで走っている限り、荒っぽいエンジンの割には十分な落ち着きがあるのだ。

コンパスの操縦系は、総じてほどほどの手応えが感じられる。ただし、シフトレバーはスポンジーで、選んだギアにしっかり入っているか自信が持てないこともあるし、クラッチペダルのタッチもやや不明瞭。どちらもドライビングに決定的な問題を引き起こすほどではないが、歓迎できるものでないのもまた確かだ。

しかし、運動面の仕上がりにおいて、それ以上に歓迎しかねる、ジープが細かい注意を欠いている箇所を指摘するなら、曖昧なフィールのクラッチと、自動で掛からず素早く切れない電動ハンドブレーキとの組み合わせ、そしてアイドリングストップからの再始動が遅いエンジンスターター/ジェネレーターだ。この癖に慣れないうちは、3つの不具合が重なって、しばしばエンストしてしまうので、まずはアイドリングストップをオフにしたくなる。

パッドの小さいペダルは、緊急時にフルブレーキングしそびれるのではないかと危惧されたが、そうしたケースはまったくなかった。オプションの19インチホイールにブリヂストンの高性能SUV用タイヤを履いたテスト車は、乾燥した舗装路で強烈な制動力をみせた。17インチのオールtレーンタイヤを履くトレイルホーク仕様では、これより多少は目減りすると思って間違いない。

テストコース

ミルブルックでグリップ限界まで攻めても、コンパスは安心感があり、安定して穏やかなままだ。このクルマのなすべきことを考えれば、求めることはそれ以上ない。ジャガーEペースやBMW X1なら、かなり上回るグリップやペース、さらに正確性でかっ飛ばせるだろうが、これは全方位的な運動性ではなく、オンロードでの走りに重きを置いたクルマだからだ。

タイトコーナーに進入する際には、初期ロールの速さに少々驚かされるかもしれないが、ボディの横方向の挙動は、それがハンドリングのスタビリティやステアリングの制御力を損なうまでは完全に抑えられている。

電子制御のスタビリティコントロールは、タイヤのグリップレベルによくマッチしており、アンダーステアを過大になるまでは押さえ込む。オンのままにしておけば、コーナー中盤でパワーをかけすぎて大きく膨らむ心配を打ち消してくれる。もしもオフにしたならば、限界域ではすぐさまアンダーステアに見舞われることとなる。

手元に感覚を伝えないステアリングは、T1でトランスミッションの衝撃により進路を逸らさずにすむが、前輪グリップの程度を見図るのが難しい場合もある。

電子制御スタビリティコントロールと4WDシステムは、T4のようなきつめのコーナーでトルクを絞り、バランスを保って良好なトラクションをもたらしてくれる。

スロットルを思い切り踏み込めば、エンジンは3速でT6へ駆け上がるに十分なトルクを発揮するが、手加減すれば登坂に苦労するだろう。

発進加速


テストトラック条件:乾燥路面/気温15℃
0-402m発進加速:18.3秒(到達速度:124.4km/h)
0-1000m発進加速:33.8秒(到達速度:154.8km/h)


フォルクスワーゲンティグアン2.0 TDI 150 SE(2016年)
テストトラック条件:湿潤路面/気温11℃
0-402m発進加速:17.9秒(到達速度:127.3km/h)
0-1000m発進加速:33.1秒(到達速度:159.3km/h)

制動距離


テスト条件:乾燥路面/気温15℃
97-0km/h制動時間:2.78秒


フォルクスワーゲン・ティグアン2.0 TDI 150 SE(2016年)
テスト条件:湿潤路面/気温11℃

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