【自動車シミュレーターの現在地】どこまで実車を再現? Gが重要 前編

公開 : 2019.12.27 11:20

Gが問題 最新の答え

こうしたフライトシミュレーターでは、シリンダーによってさまざまな方向への機体の傾きは再現できるものの、大抵は油圧駆動のために反応が遅く、Gまで感じとることは出来ないが、航空機向けとしてはこれでも問題ない。

もし大きなGが発生したような状態にあるとすれば、それはおそらく望ましくない事態が発生しているということになるからだ。

非常に高価なテクノロジーのように見えるが、実際には大きな節約高価を発揮している。
非常に高価なテクノロジーのように見えるが、実際には大きな節約高価を発揮している。

だが、高速コーナーでマシンに発生するGを再現することを考えてみて欲しい。例えばモンツァのようなコースを舞台に、レール上に設置されたポッドで巨大なGを再現するには、実際のモンツァのコースと同じくらいのレールサイズが必要になるというのだから、とても現実的ではないだろう。

さらに、ポッドのような形状の場合、実際のコクピットを入れ替えるなど諦めるしかないが、エルゴノミクスを評価するため、実際の環境を再現したシミュレーターでテストをしたいと考える自動車メーカーはますます増えている。

だからこそ、部屋の中にシミュレーターを設置して、必要に応じてクレーンでコクピットの入れ替えが出来るようにするとともに、初期のシミュレーターで大きな問題となったドライバーに違和感を与えない、実際に走行しているかのように感じられるコクピットが求められているのだ。

確かに難しい問題だ。今回最新の答えを知るべく2社を訪ねてみたが、そのどちらもが英国企業だった。

思わず夢中に

クランフィールド・シミュレーションはもともと戦闘機用のフライトシミュレーターを手掛けていたが、彼らには解決すべきある問題があった。

その問題とは、戦闘機のパイロットたちにどうやって数分間も続く大きなGを感じさせるかというものであり、その答えを見つけ出すヒントとなったのがパイロットのある装備品だった。

プライアーがフォード所有のアンシブル・モーション製シミュレーターへと乗り込む。
プライアーがフォード所有のアンシブル・モーション製シミュレーターへと乗り込む。

飛行中、パイロットは血液の降下を防ぐことで意識を失わないよう下半身を加圧するGスーツというものを着用しているが、これをクルマのシミュレーターに応用すれば、タイミングよくシートかシートベルトを加圧することで、ドライバーはスクリーン上に映し出される映像にマッチした加速を感じることが出来る。

激しい右コーナーでは? シートの左側を膨らませれば良い。

ハードなブレーキング? シートベルトをしっかりと締め付けるのだ。

クランフィールドのシミュレーターを試してみたが、まさにサーキット走行中の様子が見事に再現されていた。

車体の激しい上下動を再現するための高速振動や、視線の変化(もし実際にハードなブレーキングをすれば、シート上で体が動くために目線も変化する)、マシンの限界に近づいたことを教えてくれる「ヨープラットフォーム」、さらにはピッチやロールなどを再現するサスペンションシステムなど、数多くのテクノロジーも採用されている。

思わず夢中にさせられた。

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