モジュール式EVプラットフォームで市場を牽引 WEVC:イノベーション賞 #AUTOCARアワード2026

公開 : 2026.07.02 17:05

2025年後半から2026年前半で、UK編集部が各カテゴリーのベストを称えるAUTOCARアワード。革新的な技術へ贈られるイノベーション賞は、EV用少量生産プラットフォームを開発したWEVCへ。

クルマを特徴付けるプラットフォーム

クルマを特徴付けるもので、プラットフォームを超えるものはないだろう。スペースフレームにラダーフレーム、モノコック、スケートボードなど、基礎骨格次第でサスペンションやステアリング、パワートレインの発揮できる性能は左右する。

多くの自動車メーカーが、EV専用プラットフォームの開発に巨費を投じる理由でもある。一方、生産ラインに至るまでのコスト回収には、数万台単位で量産する必要もある。複数のブランドやモデルで、共有されることが多いのはそのためだ。

WEVCが開発したEV用プラットフォーム、PACES(ペーシズ)
WEVCが開発したEV用プラットフォーム、PACES(ペーシズ)

スポーツカーの分野では、英国を中心に少量生産を持ち味にするブランドは多い。だが高価格帯のモデルでなければ、それに向いたカーボンファイバー構造の採用は難しい。

そこで、EV時代に出番となるのが、英国を拠点にするワット・エレクトリック・ビークル・カンパニー(WEVC)。代表のニール・イェーツ氏率いる技術者チームは、長年に渡って少量生産モデルの技術開発を得意としてきた。

柔軟性が高く汎用性に優れたモジュール式システム

彼らは、小規模メーカーが今後生き残る上で必要になるであろう、柔軟性が高く汎用性に優れたモジュール式少量生産システムを、6年かけて完成させた。それが、PACES(ペーシズ)と呼ばれるスケートボード状のEV用プラットフォームだ。

アルミ押出材を利用し、巧妙に設計された部品を構造体の隅に用いることで、軽く仕上げつつ高い精度と剛性を確保。プレス加工や治具の利用を、不要としている。ちなみにイェーツは軽量化を重視しており、コーリン・チャップマン氏を例に挙げる機会が多い。

EV用プラットフォーム、PACES(ペーシズ)を説明するニール・イェーツ氏(左)
EV用プラットフォーム、PACES(ペーシズ)を説明するニール・イェーツ氏(左)

その結果、1けた単位から数1000台という規模で、独自のEV生産を可能にしている。従来より遥かに短期間で、量産仕様を市場へ投入することもできるという。

2026年1月にアメリカ・ラスベガスで開かれた技術見本市、CESでペーシズは発表。フィンランドのドーナツラボ社による、インホイール・モーターと固体電池製造技術を披露するプラットフォームとしても利用され、その優位性が認知されるに至った。

AUTOCARも関わったロータスへのEV提案

ペーシズは、既に世界中で利用が始まっている。ロードスイーパーやピックアップトラックなど、特別な目的に合わせた自治体向けの車両から、オープン・スポーツカーなどへ姿を変え、公道を走っている。公表できない、欧米のプロジェクトも多いそうだ。

ソフトウエアやブレーキ、運転支援システムの開発企業が、デモ用にペーシズ・プラットフォームを導入する例もあるとか。走行試験の手間を省けるだめだろう。

AUTOCARとWEVC、アバン・デザイン社の共同によるスポーツカーのアイデア
AUTOCARとWEVC、アバン・デザイン社の共同によるスポーツカーのアイデア

実は、AUTOCARもこのペーシズには関与している。2025年後半、弊誌を主体にWEVCとアバン・デザイン社の共同によるスポーツカーのアイデアを、ロータスへ提案している。既存のエミーラと並行して、へセル工場で生産できるEVを。

それはエリート 4Sと名付けられたプロジェクトだったが、非常に高い評価を得ることができた。ロータスの役員会を除いて。

記事に関わった人々

  • 執筆

    スティーブ・クロプリー

    Steve Cropley

    役職:編集長
    50年にわたりクルマのテストと執筆に携わり、その半分以上の期間を、1895年創刊の世界最古の自動車専門誌AUTOCARの編集長として過ごしてきた。豪州でジャーナリストとしてのキャリアをスタートさせ、英国に移住してからもさまざまな媒体で活動。自身で創刊した自動車雑誌が出版社の目にとまり、AUTOCARと合流することに。コベントリー大学の客員教授や英国自動車博物館の理事も務める。クルマと自動車業界を愛してやまない。
  • 翻訳

    中嶋けんじ

    Kenji Nakajima

    1976年生まれ。地方私立大学の広報室を担当後、重度のクルマ好きが高じて脱サラ。フリーの翻訳家としてAUTOCAR JAPANの海外記事を担当することに。目下の夢は、トリノやサンタアガタ、モデナをレンタカーで気ままに探訪すること。おっちょこちょいが泣き所。

AUTOCARアワード2026の前後関係

前後関係をもっとみる

関連テーマ

おすすめ記事