【60年ぶりに姿を現したクーペ】タルボT26グランドスポーツ チェコで復活 後編

公開 : 2020.02.22 16:50  更新 : 2020.12.08 10:55

ホイールカバーは型から作り直し

「これはグランドスポーツでも特徴的な部分です。オプションのアルミニウム製ではなく、真鍮にクロームメッキ仕上げを選んでいます。どちらも新車当時に用意されていたものです」

ディスクを押し出す型は、クデラのワークショップで作り、カリフォルニアへと送った。「ホイールカバーを作ったマイクは75際の誕生日を迎えたところ。リアイアを決めており、グランドスポーツのものが最後の仕事だったそうです」 とクデラがうち明かす。

タルボ・ラーゴT26グランドスポーツ・クーペ(1949年)
タルボ・ラーゴT26グランドスポーツ・クーペ(1949年)

ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでお披露目される前、最後の仕上げとして必要だったのが、ディオール製の黄色と青色のコート。1949年、フィゴーニのワークショップの外で撮影されたファッション写真に写っている。

当時の写真は1949年10月、パリ・サロンのプレビュー用に撮られたもので、モノクロ。だが手で色付けがされており、スタイリッシュなコートの色はしっかりわかった。ロバートの妻は、チェコのファッション界で活躍するイヴォナ・ライトナーへ連絡し、コートの再現を頼んだ。

最終のテスト走行が終わると、タルボ・ラーゴは再びカリフォルニアへと運ばれた。世界で最も有名なコンクールでお披露目するという、クデラの夢を実現するために。

完璧な状態に仕上げられたT26グランドスポーツは、プレイベントのツアー・デレガンスへも快く参加。60年近くに渡って一般の目に触れてこなかったフィゴーニ製のクーペは、会場へ着くなり大きな注目を集めた。

念願のペブルビーチ・コンクールへ出展

多くの参加者が、木曜日の走行前にクルマが並ぶ様子を見て、今年のベストを推測する。もちろん、ジッパーキングのタルボ・ラーゴは、誰もが話題にするクルマだった。

フィゴーニ製のコーチワーク・ボディの下には、スポーティなシャシーが隠れている。切れの良い排気音は、ル・マンを戦ったタルボ・ラーゴを彷彿とさせた。クデラにとっても、太平洋の景色を楽しめる沿岸のビッグサーと呼ばれる地域のドライブは、信じられないほど素晴らしい体験だったろう。

タルボ・ラーゴT26グランドスポーツ・クーペ(1949年)
タルボ・ラーゴT26グランドスポーツ・クーペ(1949年)

3日後、ペブルビーチ・コンクール・デレガンスでのペブルビーチ・フェアウェイ。レストアの質や仕上げの正確さが審査員へ強い印象を与え、タルボはクラス優勝を獲得した。

午後遅く、最終審査のコースには上位3台として、デビッド・シドーリックのアルファ・ロメオ8C-2900Bツーリング・ベルリネッタと、レーマン・コレクションの1929年生デューセンバーグ Jマーフィー・タウン・リムジンが、タルボT26グランドスポーツとともに並んだ。

そして総合の審査発表。惜しくも、最優秀賞はアルファ・ロメオが獲得した。だが、チェコでレストアを手掛けたクルマが権威あるコンクールで上位に選ばれたことに、クデラは誇りに感じている。

ペブルビーチでの発表以来、フィゴーニ・タルボ・ラーゴは2度ヨーロッパで展示されている。2019年6月にはシャンティイ・コンクール・デレガンスのために60年ぶりにフランス後を踏んだ。その後、9月には英国ブレナム宮殿を会場にした、サロン・プリヴェにも出展している。

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