フェラーリ・カリフォルニア

公開 : 2012.04.19 23:45　　更新 : 2017.05.29 18:53

■どんなクルマ？

2008年にフェラーリ・カリフォルニアが登場した際に、マラネロからは少数ではあるがこういった意見が出た。このグランド・ツーリング・コンバーチブルは、1980年にモンディアルが登場した時と同じように、世界的に有名なマラネロのブランド価値を落とすことになるのではないと。そんな冷静な懸念は別としても、とりわけそのハンドリングを中心に、多くの人が手放しで賞賛をすることはなかったモデルであったことは確かである。

しかし、フェラーリは粘り強く4年間で8,000台もの、このV8のドロップトップを販売した。実は、10人のカルフォルニアのオーナーのうち、7人はフェラーリにとっては新しい顧客である。毎日このクルマを使うオーナーの、多種多様の状況下における様々なフィードバックからを集めると、より高価でよりパワフルなAMGメルセデスやポルシェ911ターボを足にすることを諦めた人たちであっても、より明確なスピードと力強い身のこなしを、この150,000ポンド(1,995万円)のスポーツカーに求めていることがわかった。

■どんな感じ？

ミッドライフを迎えたカリフォルニアのフェイスリフトは深いところまで手が加えられた。アルミニウム製のボディは、現在16の異なる合金で製作されているが、このフェイスリフトによって剛性を犠牲にすることなく30kgのシェイプアップを達成している。

また、サスペンションとパワーステアリングにも手が入れられた。フロントに搭載される4.3リッターV8エンジンも30bhp、1.9kg-m、パワー、トルクが増した。フェラーリは、0-100km/h加速が3.8秒に向上しただけでなく、軽量化とサスペンションのアップデートによって、ダイナミックなレスポンスとボディ・コントロールの向上、そして静かで快適な乗り心地をもたらしたとアナウンスしている。

それでもカルフォルニアに十分なパフォーマンスがないと判断する向きには”ハンドリング・スペチアーレ(HS)”パックが用意される。それはフロント15%、リア11%固められたサスペンションと、2.5から2.3に高められたステアリング・ロック、そしてマグネトヘロジカル・ダンパーがセットとなったものだ。そのコストは5,000ポンド(65万円)弱である。そして、多くのオーナーが、その装着を選ぶだろうことは予想に容易だ。

しかし、本当に必要な装備なのだろうか。フェラーリは2012年のカルフォルニアにスタンダードとHSスペックを用意した。確かにHSスペックは横方向のグリップと機敏さにおいては向上しているが、スタンダード・モデルほど気持ちの良いドライブは達成できていない。

特に、そのステアリングは信頼のおけるものではない。まったく突然、ステアリングの重さも変わることなく、ステアリング・レスポンスが変わるのだ。従って、激しいコーナリングではスムーズなラインを取ることが難しい。アンダーステアが簡単に顔を出すのだ。

HSモデルのボディ・コントロールが非線形であることも助けにはならない。初期のボディ・ロールは少ないが、クルマがスライドし始めるまでのロールも極めて少なく体感しにくい。

スタンダードなカルフォルニアは、HSスペックとは対照的にドライブはイージーで魅力的だ。シャシーの変更にもバランス良く迎合しているといえる。HSスペックのような神経過敏に苦しまずに済み、2008年モデルよりもロールやノーズ・ダイブが抑えられていて、ハンドリングも限界が掴みやすくなっている。

■「買い」か？

確かにおすすめできるクルマではある。印象的な賑やかなV8エンジンと、素晴らしいツイン・クラッチのギアボックスを含めて、魅力的なハイエンドなオープン・トップである。

但し、HSパックをオーダーするのであれば、事前に乗って確かめることをおすすめする。テスターのオピニオンとしては、より高くなったグリップとスタビリティが、スタンダード・モデルのハンドリングと乗り心地を妥協するだけのものがあるとは考えられないのだ。もし、あなたが私の言葉を信じていないなら、マラネロのテスト・ドライバー、ラファエレ・デ・シモンに尋ねて欲しい。彼がHSスペックとスタンダード・モデルのどちらかを好むのかと。彼は確実にスタンダード・モデルを好むと言うはずだ。

(マット・サンダーズ)