ロードテスト BMW 2シリーズ・グランクーペ  ★★★★★★☆☆☆☆

公開 : 2020.04.18 11:50

走り ★★★★★★☆☆☆☆

クーペ的なシルエットと、アグレッシブなMスポーツ仕様のボディワークが気に入ったなら、購入への次の段階はエンジングレード選びだ。しかし、2シリーズ・グランクーペに熱い走りを期待するユーザーなら、エントリーグレードの218iは選ばないほうがいい。

BMWのB38型3気筒ターボはミニにも搭載されるユニットで、たしかに称賛に値するパワフルさを備えている。しかし、このクルマの動力性能は見るべきほどのものではない。テスト車が満タンで1420kgという、比較的軽いウエイトだったにもかかわらずだ。

トランスミッションもブレーキも称賛に値する出来栄えだ。ただ、3気筒エンジンだけが期待されるパフォーマンスを発揮できていない。
トランスミッションもブレーキも称賛に値する出来栄えだ。ただ、3気筒エンジンだけが期待されるパフォーマンスを発揮できていない。    JOHN BRADSHAW

テストコースで計測したデータでは、0-97km/hが8.8秒。発進はそれほど元気なものではなく、前輪がトラクションを失う心配はまったくなかった。とはいえ、このグランクーペのローエンドグレードが単に遅いだけだったなら、そこまで問題視することはなかっただろう。

ところが、この218iに積まれたB38ユニットには、ミニでみられたようなエネルギッシュさや、ガンガン回ろうとするスピリットが欠けているように感じられる。キャラクターがない、と言い換えてもいい。

スムースかつマイルド、そしてみごとなまでにリニアだが、常に自制しているようなフィールなのである。それがよく表れているのが、われわれがフレキシビリティの指標としている4速固定での48-113km/h加速タイムだ。

12秒というその数字は、BMWらしからぬ結果といえる。たとえ、速さを予感させる新世代ボディスタイルの下にあるのが、前輪駆動パワートレインだという事実を差し引いたとしてもだ。

ボンネットの下に弾けるような元気を宿してはいない218iグランクーペだが、制動性能は強い説得力がある。サーボのアシストは控えめで、ブレーキペダルは徐々に効きが増していくのがいい感じ。ドライバー重視のメーカーであっても、最近ではこうしたフィールを実現しているのが珍しいというほどだ。

113-0km/hの制動距離は45.7mで、いまどきの基準でみれば並外れたものではない。しかし、ドライバーにひそかな自信を抱かせてくれるブレーキシステムだ。また、ほかの操作系にはそれがないものもある、表面的な洗練ぶりも備わっている。

ステップトロニックことBMWのDCTもまた、賞賛すべき出来栄え。7段のギアが、標準仕様の6速MT以上にエンジンのパワー不足を補ってくれる。

変速は素早いが、主に低速時のDCTに時折みられる不必要なぶっきらぼうさはない。低回転域でのエンジントルク不足により、しばしば複数段のシフトダウンが必要になるが、それもトラブルの種にはならないのだ。

しかも、トップギアのレシオが高いので、高速道路の巡航時にはエンジン回転数が2000rpmを切る。結果としてそれが、静粛性や燃費の向上に貢献してくれるのもうれしい。

しかし、周辺要素がいかに優れていても、埋め合わせることのできないものがある。それは、218iグランクーペのエンジンがスポーティでダイナミックなルックスのクルマを手に入れたドライバーの期待には応えられない、という現実だ。

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