【スバルSTI、なぜ今アメリカ重視?】S209は北米専用 商品価値観の違いが背景 日本への影響は?

公開 : 2020.08.19 05:50

きっかけは「ワイルドスピード」?

STIとアメリカとの関係を、もう少し詳しく知るために、時計の針を少し戻してみよう。

アメリカ人の中でSTIが話題に上ることが増えたのは、90年代末だ。

先述のフレキシブルドロースティフナー。
先述のフレキシブルドロースティフナー。    桃田健史

米西海岸を震源として、日系チューニングカーブームが始まったのだ。その模様をドキュメンタリー的なタッチで描いたのが、映画「The Fast and the Furious(邦題:ワイルドスピード)」である。

当時、筆者はロサンゼルス近郊に居住し、スバルWRX」を所有していた。また、仕事の関係でスバルの北米事業会社であるSOA(スバル・オブ・アメリカ)の幹部らとの接点もあった。

SOAは「WRX STI」の北米導入を検討していた。ライバルである三菱「ランサー・エボリューション」がひと足早く、アメリカでの販売を始めたからだ。

だが、WRX STIがアメリカで売れるのかについて、SOAは半信半疑だった。

なぜならば、日系チューニングカーや、日系ハイパフォーマンスカーに興味があるアメリカ人の多くは、STIの存在をソニープレイステーションのグランツーリスモを通じてしか知らなかったからだ。

アメリカでラリーはマイナー競技であり、STIの本質がユーザーに伝わりにくい環境にあった。

さらに、当時のスバルは弱小日系メーカーであり、スバルブランド自体の認知度も低かった……。

販売数が急増も STIまだ浸透せず

その後、2000年代半ばには、アメリカでの日系チューニングカーブームは冷めきってしまい、STIファンも一定数で留まっていた印象がある。

ところが、2000年代後半から2010年代にかけて、スバル全体の販売が急激に伸びていく。

「S209」のインテリア。
「S209」のインテリア。    桃田健史

北米市場を強く意識した商品作りと、「ラブキャンペーン」と名付けたマーケティング戦略が奏功した。

それまで、降雪地帯の生活四駆車としてのイメージが主流で、そこにハイパフォーマンス系のイメージが少し加わった程度だったスバルが、トヨタホンダ日産に次ぐ、第4のメジャー日系ブランドへと成長していったのだ。

そうした中で、STIについても北米仕様などを盛り込んできたのだが、前述のように2020年時点では、ユーザーからはモデルグレードという認識が強い。

そこで、スバル本社の戦略として、スバル車の販売台数が世界で最も多い北米市場において、スバルブランド全体をけん引するシンボルとして、北米専用S209を位置付ける。

その上で、北米でSTIブランドを確立することを狙う。

こうした海外戦略で得られた成果は当然、日本市場にもフィードバックされる。

「WRX STIF J20ファイナルエディション」のさらに先へと、STIを導くことになるだろう。

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