【地味系フェラーリ】なぜ、612スカリエッティが高額落札? セミATとMT、現在の評価 RMサザビーズ・オークション

公開 : 2020.08.19 07:20  更新 : 2021.10.11 09:34

フェラーリの中でも忘れられがちな「612スカリエッティ」。ある1台が、オークションで相場を超える高額落札。日本では選ばれにくい、4座のフェラーリ。なぜ、約3500万円もの値がついたのでしょう?

なぜ、612スカリエッティがモントレーに?

text:Kazuhide Ueno(上野和秀)
photo:RM Sotheby’s

新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、オンラインで行われたRMサザビーズ・モントレー・オークション。相場を決めるともいわれる世界的なイベントだ。

出品車リストを見てゆくと、由緒正しきクラシックカーから最新のスーパースポーツまで、さまざまなコレクターズカー108台がその存在をアピールしていた。

RMサザビーズ・シフト/モントレー・オークションに出品された「フェラーリ612スカリエッティ」。希少な6MT仕様。
RMサザビーズ・シフト/モントレー・オークションに出品された「フェラーリ612スカリエッティ」。希少な6MT仕様。    RM Sotheby’s

インデックス・ページを精査していると、見落としてしまいそうな“地味な”クルマに気づいた。フェラーリの21世紀初頭の4シーター・レンジを担当した「612スカリエッティ」である。

当時ピニンファリーナで腕を振るっていた奥山清行氏が、クラシック・モデルのモチーフを盛り込んでデザインしたことで知られ、デビューしたのは2003年。

今回のオークションに出品されたのは、淡いブルーメタに塗られた1台で、この個体には特別な点があった。

そう、超レアな6速マニュアル仕様だったのである。

マニュアルを選べた最後の世代

21世紀に入ると、フェラーリはF355から始まった2ペダル・パドルシフト(セミ・オートマティック)のF1マティックが主流になり、生産台数のほとんどを占めるほどになっていた。

しかしながら、マニュアル・シフトに拘るオーナーに向けてマニュアル・ギアボックス仕様も用意されていた。

4人乗りのフェラーリは日本では敬遠されることが多いが、欧米ではクーペモデルのオーナーが2台目として所有する傾向がある。
4人乗りのフェラーリは日本では敬遠されることが多いが、欧米ではクーペモデルのオーナーが2台目として所有する傾向がある。    RM Sotheby’s

最後にMTを選べたモデルは、F430、599、そして612スカリエッティという世代。ほとんどのカスタマーはF1マティックを選んでいたため、マニュアル仕様はごく少数が生産されたにとどまる。

MT仕様 セミATの3倍の評価も

このあとに登場する458、カリフォルニア、F12になると、ギアボックスがDCTに切り替わり、マニュアル仕様を選ぶことはできなくなってしまった。

販売されていた当時は意識しなかったコレクターが後年になって気付いたこともあり、先頃のコレクターズカー・バブル絶頂期には、F430や599のF1マティックが1500万円前後で取引される中にあって、マニュアル仕様は5000万円以上で落札されていたほどである。

フェラーリの4シーターは、欧米ではベルリネッタやクラシック・モデルを所有するオーナーがサブで購入するものという認識がある。

しかし1台だけで済ますオーナーが多い日本では、4シーター・モデルが選択肢に入らないことが多く、中古になるとF1マティック仕様なら700万円からというお買い得な価格帯にある。

記事に関わった人々

  • 上野和秀

    Kazuhide Ueno

    1955年生まれ。気が付けば干支6ラップ目に突入。ネコ・パブリッシングでスクーデリア編集長を務め、のちにカー・マガジン編集委員を担当。現在はフリーランスのモーター・ジャーナリスト/エディター。1950〜60年代のクラシック・フェラーリとアバルトが得意。個人的にもアバルトを常にガレージに収め、現在はフィアット・アバルトOT1300/124で遊んでいる。

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