【ホンダ2021年でF1参戦終了】じつは影響すくない? これまではホンダ=F1の精神 徐々に変化

公開 : 2020.10.05 11:50  更新 : 2021.07.12 18:33

フォーミュラ1やり抜いたという自信

もう1点は、人材育成だ。

二輪メーカーだったホンダが四輪事業を始めた頃、多くの若者はF1という世界を舞台に技術研究がしたいという熱意を持ってホンダ入社の面接を受けた。

80年代のセナ・プロスト時代、フジテレビを中心として日本全土に広がったF1ブームの中、ホンダに入ればF1も体験できる可能性があり自動車エンジニアとしての夢が広がる、という想いを抱いた若者も大勢いた。

これは一般論ではなく、筆者が過去40年間ほどの間に接してきた、ホンダ関係者の多くから実際の言葉として聞いた。

和光市や栃木での基礎研究、量産車開発などエンジニアリング部門だけではなく、国内営業、海外営業、購買、マーケティング、広報など、ホンダという企業の各部門で「F1をやっている会社で働いている誇り」が日々の業務に対する心の下支えになっているホンダ社員は大勢いる。

こうした中で、実際にF1開発に携わり、その後に量産車開発の部門に移動した人たちを直接話すと、皆が同じようなことを言う。

「F1をやり抜いたのだから、(その後は)何でもできるという気持ちになる」

その典型的な事例が、軽の大ヒット作「Nボックス」である。

ホンダF1は、エンジニアリングという直接的、また間接部門に対する波及効果を含めてホンダ社内に多大なる影響を及ぼしてきた。

ホンダ、F1やめても影響すくない?

では、ホンダがF1をやめることで、ホンダ車の売上げへの影響はどうなるか?

世界市場全体で見ると、短期的には影響は少ないだろう。

なぜならば、ホンダの利益のほぼ半分を担う北米市場において、F1の認知度はけっして高くなく、ブランドイメージ訴求でF1を多用してこなかったからだ。

一方、F1人気の高い欧州では、そもそもホンダのシェアは大きくない。

日本においても、近年のホンダ車のイメージは、Nボックスが主導し、フィットなど小型車のハイブリッド車需要や、フリード等の小型ミニバンが市場を支えている。

また、トップエンドのNSXは北米生産で日本販売台数は極めて少ない。

タイプRについても、モータースポーツのイメージが強いが、個別モデルとしてF1と直結する商品でもない。

つまり、F1をやめることで、量産計画に大幅な変更が加わることはない。

ただし、「モータースポーツはホンダのDNA」(八郷社長)であり、長年に渡る「F1のホンダ」という社内外でのホンダに対する企業イメージが、これからはホンダ史の1ページに留まることになる。

中長期的な視点で、ホンダがF1をやめることが、ホンダの販売にどう影響するのか?

そうした未来図を現時点で予想することは、極めて難しい。

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