アウディ異例のトップ公式声明に見える、空前の世界的ブーム『F1』ビジネスがもたらす経済効果【自動車ニュースを読む】

公開 : 2026.04.09 11:45

毎日発信されるプレスリリースの中からピックアップし、ジャーナリスト橋爪一仁が分析するコラムです。今回はF1日本グランプリ直前に発表されたアウディのマネジメント体制発表を入口に、F1ビジネスの経済効果について解説します。

アウディがF1のマネジメント体制を変更

アウディはF1日本グランプリの直前となる3月23日、F1プロジェクトのマネジメント体制について、プロジェクト責任者であるマッティア・ビノット氏がチーム代表も兼務することと、チーム代表を担っていたジョナサン・ウィートリー氏が個人都合からチームを離れたと発表した。

ウィートリー氏はレッドブルで手腕を発揮し、2025年4月にアウディF1プロジェクトへ加わった。ビノット氏と共にスイス・ヒンヴィールの拠点でチームを立ち上げて新規パワーユニットも開発し、アウディとしてF1初参戦となる今年の開幕戦オーストラリア・グランプリでポイント獲得という快挙にも貢献している。

今年からF1に参戦しているアウディ。写真は鈴鹿サーキットの日本グランプリでの様子。
今年からF1に参戦しているアウディ。写真は鈴鹿サーキットの日本グランプリでの様子。    アウディ

アウディのトップである(アウディAG CEO兼アウディ・モータースポーツAG取締役会会長)ゲルノート・デルナー氏も、「参戦準備段階という重要な期間におけるウィートリー氏のプロジェクトに対する貢献への感謝と今後の活躍を祈っていることと、2030年までにF1でワールドチャンピオンを争う最高水準のチームを構築するためにあらゆる努力を尽くします」と声明を発表した。

日進月歩のF1の世界では各種開発はもちろんマネジメントやスタッフなどまでのあらゆる面の動きが速く、チーム代表が交代することの影響は小さくはない。しかし、アウディほどの大企業のトップが公式声明を発表するのは極めて異例で、F1に対する本気度が伺い知れる。

レギュレーション変革と各チームの概況

言うまでもなくF1は、レース=モータースポーツ界における階層の頂点。2026年はレギュレーションが変革され、大きいポイントは3つある。

ひとつ目は車体のコンパクト化で2025年に比較して、最大幅が100mmマイナス(1900mm)、最大ホイールベースが200mmマイナス(3400mm)、最低重量が30kgマイナス(768kg)に変更されている。

マッティア・ビノット氏は、かつてスクーデリア・フェラーリでもチーム代表を務めた人物だ。
マッティア・ビノット氏は、かつてスクーデリア・フェラーリでもチーム代表を務めた人物だ。    アウディ

ふたつ目は、動力源の割合がエンジン主体からエンジンとモーターそれぞれ半分(50%)ずつへ変更。モーター(MGU-KとMGU-Hは廃止)出力が最大350 kWに引き上げられ、1周あたりの回生エネルギーも約2倍(およそ8MJ)となり、エンジン出力の燃料エネルギー流量(ECUと流量計から算出)も制限されている。

3つ目はカーボンニュートラル燃料導入で、これまでも食物由来のエタノールが10%使用されてきたが、今年からはカーボンニュートラル100%燃料が使用されている。

今回の変革はレース中の追い抜き等のバトルを増やし観客を盛り上げるものの、ドライバー負荷等の観点から安全上の懸念があり、興行側面が強すぎると問題視されている。

事実、第3戦の日本グランプリ(鈴鹿サーキット)までを見る限り、昨年とはチーム間の力関係に変化が見られる。まず、メルセデスが一歩抜きん出た速さを見せ、次にフェラーリ、同じくメルセデスのパワーユニットを用いるマクラーレンが続き、昨年までトップレベルの速さを見せていたレッドブルは精彩を欠く形だ。

記事に関わった人々

  • 執筆

    橋爪一仁

    Kazuhito Hashizume

    ジャーナリスト。自動車業界を経て現在はアビームコンサルティング(エグゼクティブ・フェロー)。企画業務を中心に自動車のブランド・オリジナリティ時代におけるCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等の幅広い領域を研究、アドバイザー業務を中心に活動中。特に自動車を経済と技術の側面から分析するのが専門。
  • 編集

    平井大介

    Daisuke Hirai

    1973年生まれ。1997年にネコ・パブリッシングに新卒で入社し、カー・マガジン、ROSSO、SCUDERIA、ティーポなど、自動車趣味人のための雑誌、ムック編集を長年担当。ROSSOでは約3年、SCUDERIAは約13年編集長を務める。2024年8月1日より移籍し、AUTOCAR JAPANの編集長に就任。左ハンドル+マニュアルのイタリア車しか買ったことのない、偏ったクルマ趣味の持ち主。

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